「映画スターの衣装が次々と」今夜、ロマンス劇場で 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
映画スターの衣装が次々と
綾瀬はるかはいまや日本を代表するコメディエンヌである。エキセントリックというか、一風変わった女性を演じさせるとピカイチだ。
加藤剛が思い出を振り返る設定は、物語の時間をときどき現在に引き戻して観客が疲れないようにするよくある手段だと思っていたが、ラストシーン近くになると制作者の本当の意図がわかり、その思い入れと優しさが伝わってきた。
坂口健太郎は意外に器用な役者で本作のような純朴な役柄から悪意の塊のような役まで上手にこなす。本作の青年は夢の多かった戦後の映画界の草創期における典型で、野望がありながらも素直でどこまでも前向きだ。高慢なお姫様の相手役としてふさわしい設定のひとつである。
「カサブランカ」のイングリッド・バーグマンとハンフリー・ボガートのシーンをはじめ、有名な映画の有名な場面が出てくるのも興味深いが、何より目を奪われたのが、場面が変わるたびに変化する綾瀬はるかの衣装である。映画会社においてある映画スターの衣装という設定で、色合いもコンセプトも異なる様々な衣装を次々にまとっていく。一体どれだけの人数が綾瀬はるかの衣装を担当しているのだろうか。
数々の衣装をいずれも美しく着こなすところは、流石に女優さんだなと思うが、サイズその他を綾瀬はるかにぴったりと合わせたスタッフの努力も大変なものだ。ヒロインの衣装を見るだけでも十分に楽しい映画である。
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