「人を支えるもの。」ボブという名の猫 幸せのハイタッチ ちゃーはんさんの映画レビュー(感想・評価)
人を支えるもの。
「何のために生きるのか」というよりは、「何で生きていられるのか」っていう映画だった。彼は何で生きていられたのか。
「音楽」って美しくて残酷。人を癒したり、助けたり、元気づけたりするものだけど、実は、本当に怖いもの。人によっては、それだけあれば、生きていられると思えるほどの影響力がある。何を捨てても、「音楽さえあれば」って、人生が狂った人はいくらでもいるから。
彼の生い立ちを思うと、人生が狂ってしまったのは別のところにあるけど、音楽にも狂わされている。でも、音楽が人生を救うこともあるけど。
人を支えるものって、人によって全く違う。家族の場合もあれば、恋人の場合もあるし、仕事の場合もある。もちろん、音楽の場合もある。彼を支えたのは、猫のボブ。付かず離れずの父親の存在もあったかもしれない。
守るべきものがはっきりしている時、支えてくれるものの大切さを実感したとき、人は強くなれるのだろう。
時折挟んでくる猫のボブ目線のカメラワークが、見え方と相まって演出的な意味で、心情を表しているのがよかった。
ハイライトは、ラスト近くの父親に逢いに行ったところ、虐げられていたような再婚相手に対して、「息子と話している」と力強く話したシーン。
ボブが彼を変えたのかもしれないが、冒頭からずーーーーーーっと、彼はやさしかった。ボブに対しても、誰に対しても。そんな優しさが生んだ奇跡の物語といえる。
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