「感涙」きっと、いい日が待っている Takashiさんの映画レビュー(感想・評価)
感涙
1967年、コペンハーゲン。13歳のエリックと10歳のエルマーは母親と3人で、貧しいながらも、つつましく幸せに暮らしていた。ある日、病気が悪化した母親が入院することになってしまう。幼い兄弟だけでは生活していけないと役人に判断され、エリックたちは男子児童向けの養護施設に預けられることになる。
初日から、内反足で足の悪いエルマーにとっては酷な岩運びの作業を指示され、上級生たちからもイジメの標的にされてしまう。しかし周りの児童たちは誰も助けてくれず、突然の環境の変化に戸惑い、不安に駆られる。その夜、エリックとエルマーは施設から逃げようとするが、呆気なく捕まってしまう。ヘック校長は兄弟に「勝手なことをすれば罰する」と言い放ち、ほかの児童たちに彼らを制裁するよう指示を出す。実は、施設内では厳しい規律が定められ、ヘック校長や職員たちはしつけという名のもと、児童たちに体罰を与えていたのだ。新しく赴任してきたハマーショイ先生は傷だらけになったエリックたちの手当てをしながら、彼らに「言いつけを守っていれば、最後に報われる」と諭す。エリックは施設を出られる日まで、幽霊のよう目立たないように過ごそうとエルマーに決意を語るのだった。
弟のエルマーは、慣れない環境のせいで毎晩おねしょをするようになってしまう。医者から薬を処方されるが、一向に良くならない。上級生たちからのイジメは止むことがなく、エリックは弟を庇いながらも、現状に対して不満を募らせていく。ある時、ハマーショイ先生はエルマーが文章を読めることに気付き、郵便係に任命する。エルマーは次第に元気を取り戻していく。
施設にも慣れた頃、療養中の母親からクリスマスには一緒に過ごせるという手紙が届く。しかし、帰宅日前に母親が急死。絶望したエリックとエルマーは施設から逃げるため、叔父に協力を仰ぐもヘック校長らに計画を阻止されてしまう。逃亡計画をヘック校長に告げてしまったハマーショイ先生は、責任を感じ、施設を去っていく。
15歳の誕生日が近付いてきたエリックはようやく施設から出られると思っていたが、ヘック校長から、18歳まで施設にいるように告げられる。激高したエリックはヘック校長の愛車を傷付け、ヘック校長から暴行で瀕死の重傷を負わされてしまう。こん睡状態のエリックの姿を見て、耐え切れなくなったエルマーはハマーショイ先生の元を訪ね、助けを求める。ハマーショイ先生は役所のアンダーセン捜査官に施設の現状を訴えに行くが、捜査官が出掛けていて会うことは出来なかった。悲しみに暮れながら施設に戻って来たエルマーは、目を覚まさないエリックに「もう怖がらないよ、いい方法を思い付いた」と語りかける。そして、エルマーは宇宙飛行士の扮装をし、校長の車を壊し、給水塔の屋根から飛び降りる。そこに検査官とハマーショイ先生が駆けつけて兄弟は病院で治療を受けて一命を取り留める。その後、ハマーショイ先生とエルマーは校長に永久証明書を要求し脅されながらも受け取る。その後、生徒のみんなと別れを惜しむエルマーの気持ちに突き動かされるように検査官に相談を持ちかけ、施設の全貌が明かされることとなる。ストーリーは施設の中の一人のナレーションで語られていく。ラストはハマーショイ先生と、エリック・エルマーを乗せた車に向かって彼が手を振るシーンが印象的。その後、物語の舞台が1960年代に実在した施設での出来事であることが字幕で告げられる。