「アルツハイマー・ドライビング」ロング,ロングバケーション kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
アルツハイマー・ドライビング
車の運転はさせちゃダメだろうと批判的になりつつも、ついつい見入ってしまうロードムービー。その運転に関しては、死期も迫り、人生をどう終えるかを考えていた妻エラにとってはどうでもいいことだったのだろう。エンディングを見てそう感じた。
ヘミングウェイをこよなく愛する元大学教授。教え子の評判も良かったようで、卒業後も彼の自宅に遊びにくる子が多かった。目的地も未だ行ったことのない、ヘミングウェイの家があるキーウェスト。泊りはほとんどキャンプ地で、夜になると、息子が作ってくれたスライドショーを楽しむ二人。毎夜、ドライビングシアターで映画鑑賞を楽しんでるかのような老夫婦の後ろに人が集まってきたりするのだ。
ユーモアあるシーンも全ては、認知症ではあるがヘミングウェイを語りだすと止まらない夫ジョンの姿があってこそ。でも、実際に認知症患者を家族にもってる人にとっては笑えない。失禁シーンも多かったが、ブリーフ派、ボクサーパンツ派よりもオムツ派をお勧めしたくなってくる。なぜオムツにしなかったんだろうな・・・そこだけは疑問が残る。また、トランプ支持者たちのデモに交じって「make America great aggain」などと一緒になって叫んだりするシーンなんてのは、旬を逃すと面白みが半減しそう。
二人の絆を確かめるためのロードムービー。「また戻ってきてくれたのね」というセリフも多かったりするが、昔に戻ってしまうと、まるで別世界に存在しているかのような症状。最後には私の元に戻ってきてねというエラの気持ちが伝わってきて泣けてくる。しかし、病魔は彼女の方が深刻だったのだ。
終盤、夫の浮気が発覚する。それも40年ほど前の浮気。許すことができるのか?と心配にもなるのですが、ヘミングウェイの家が観光地化されていたことのショックの方が大きかったかもしれない。まぁ、知らない方がよかったですね・・・
キャロル・キングから始まり、ジャニス・ジョプリンで終わる。懐かしき音楽の旅もいい。選曲のセンスの良さも光ってました。海の上の橋がとても美しかったので、ついグーグルで検索。キーウェストって島じゃん!とビックリしてしまいました。
最後はどうなるんだろうかと思っていたら、なんとなく『きみに読む物語』を思い出してしまうエンディング。殺人罪まで問われそうだとか、賛否両論ありそうですが、残された子どもたちにとってはとても良いことだと思います。認知症患者を死ぬまで介護するしんどさを取り除いたのですから、息子たちの電話には出なかったけど、これが思いやりだったのだと感じました。
kossy さんこんにちは。
レビュー読ませてもらって、僕も真似してググってみたところです。
『キーウェストという地名は、人骨がこの島で発見されたことから、スペイン語の「カヨ・ウェソ(Cayo Hueso;人骨の島)」が由来となっている。これが英語化の過程で「カヨ (Cayo)」が「キー (Key)」に、「ウェソ (Hueso)」が「ウェスト (West)」に変化したと考えられている。』
(Wikipediaより)
地図もさることながら地名の意味を知ってしまって、ちょっと絶句。
・・二人がポンコツキャンピングカーで走ったあの道、あの橋、あの家を辿るググりは、なんだか“遺族というか息子の気分”で、両親の行方不明の最期の道のりを確かめるようで、もう一度胸が詰まってきます。
あの有名な天国のようなセブンマイル橋を渡って二人は“あっち”に行ってしまったんだなぁ・・
天晴れだけど悲しい映画でした。
そして名優の、脚本と監督を信頼しての渾身の演技には、改めて感動です。