イット・カムズ・アット・ナイトのレビュー・感想・評価
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超上級者向け
一言で言えば『猜疑心』が引き起こすサスペンスホラー。お化けやモンスターが活躍することはなく(息子の夢の中には登場するが)、そもそも何を怖れているのかも明確ではない。“それ”は、感染症なのかそれとも未知の物体なのか、はたまた虚構と現実の狭間で起こる偶発的な仕業なのか。と言うまとめになるが、それ以上に今作の作られ方は『隠れている穴を埋める想像力』を観客に求めていると言うことだと思う。公式サイトにはそのヒントであるシークレットレビューが掲載されており、それを読んで気付かされることが多い。ストーリー展開そのものはシンプルであるし、逆に肩すかしをくってしまうのだがしかし良くも悪くも不親切な部分が散見されるのは、座り心地の悪さも含めてのプロットなのであろう。決してカタルシスを得るような内容ではなく、それどころか完成途中の作品かと勘違いしてしまいがちだが、これは“狙い”であることに気付けば観方も変わる。そして穴の答えは明かされることなく、フワフワとタンポポの種の如く空中に漂いながら消えるのであろう。よく云う“一周回って興味深い”作品である。
どうせ皆んな死ぬ
恐怖は悪夢となって、夜、人を襲う。悪夢は猜疑心を生み、残忍な行為を正当化する。
とは言え、昼間だって心理葛藤でヤバイ場面あったがなぁ。ってのと、夜の闇の怖さ、演出過剰。
タイトル通りの映画ですが、コンテンツ的にはショートフィルム並みで、明らかに物足りないです。
面白い
ホラー映画ではなくパニック映画❗
解釈について話す作品
絶えず気持ちの悪い不穏な空気を感じる90分だった
世界で蔓延するウイルス?の脅威から逃れるため、厳格に暮らすポール一家
ある日、彼らの家に予期せぬ訪問者が現れ…みたいなストーリー
アバンタイトルで、一家の中の犠牲者である祖父の姿及びその始末の付け方を見せることで、余計な言葉を使わず世界観を知らしめている。
というより、具体的なこの世界で起こっていることについての言及はかなり少なめで意図的に情報を制限して、こちらの妄想や想像を掻き立てるつくりになっている。
それによって、絶えず何が起きるのか分からないことで緊張感が生まれ、見ている者を物語へ引き込んでいく。
また、ポールの息子であるトラヴィスが見る悪夢が、また気持ちの悪い感覚をもたらして、物語の緊張感を煽ってくる。
そして、登場する別の家族。ウィル一家との共同生活が始まるわけだが、ポールはもちろん妻のサラもウィル一家に信頼を置きすぎないようにしているし、ウィル一家も同様にである。
お互いがお互いの家族を守るため、協力しつつもどこが距離のある関係性が不穏な空気をもたらす。
タイトルにある"It'"は明確にされておらず、これもまた見ている者の想像に委ねられており、様々な解釈をすることが出来るだろう。
謎のウィルスなのか、その感染者か、人を疑う猜疑心か、それとも人間そのものか…
"It"を具体的な化け物や感染者の襲撃みたいにせず、人間の心理や暗部、闇という形で表現して、不気味な居心地の悪いスリラーとしてしあげている。
視聴者に色んな想像を掻き立てるために情報を制限してるために、説明不足や設定の理解出来ない部分がありながらも、絶えず続く緊張感で持たせたホラーというよりはスリラー映画
なので、ポスターヴィジュアルだけで判断してホラー映画と思って見ると、肩透かしになるかも
救いのないラストは見る人によっては胸クソ展開とも言えるか?
この誰も信じられなくなってしまった世界で、彼らはどうすべきだったのか…
心から信じていれば良かったのか?それとも接触すらしない方が良かったのか…
あと、タイトルの"night"つまり夜というのはどう解釈すべきか?
確かにウィルが家に侵入したのも、赤いドアが開いていたことも、夜に起きているが…
つまり、物語を大きく動かす展開は夜に起きているが…
それとも、トラヴィスの悪夢だろうか?
彼が見る悪夢、それは感染の恐怖もそうだろうが、人が人を、家族を始末する、そして疑い合い、誰も信じられないということへの根源的な恐怖であり、まさしく"It"の解釈にも当てはまるが…
とにかく説明を極力制限しているので解釈は様々出来るが、ある意味こちらの解釈に投げすぎとも言えるので、賛否あるのも納得
パンフのインタビューとか読んで追記↓
赤いドアを開けていたのば誰か、それについて監督は言及していないということで、改めて考えてみた。
あのドア開けたのはトラヴィスじゃないか?という考えだ。
犬のスタンリーを迎え入れるためにも、あの赤いドアを開けておく必要があった。しかし、厳しい父親のルールでそれは出来ない。
そこで起きたのは夢遊病とも言える無意識での行動だ。彼は悪夢にうなされながらも無意識にドアを開けてしまったのではないか?そしてスタンリーが来るが、悪夢の中で彼は感染者に対峙する。そこでの防衛行動がスタンリーに外傷を与えたのではないか?
スタンリーが感染していたとしても、あの外傷はなんなのか?というとこにも説明が出来るのでは?
そして、トラヴィスは床に戻り、アンドリューと手を繋ぎ、感染者を増やしてしまい、そして…
となると、彼らの悲劇の原因はトラヴィスが見ていた悪夢とストレスそしてその原因となった荒んだあの世界と家族の崩壊だろう。
自分の祖父を自分の両親が殺さなければならないという悲劇、新しくやってきた者たちへの疑心、自らが感染することへの恐怖、愛犬を見失った罪悪感、父親の厳しいルール…
様々な要因がトラヴィスを追い詰め、疲弊させた結果、悲劇は起こるべくして怒起こった…
そうとれるかもしれない。
"それ"とは人間の恐怖、悪夢、悲劇などの抽象的かつ心理的なものが具現化したということなのかもしれない
こんな風に色んな考察を語り合えたら面白いと思う。
どっち
「それ」
推し測るすべはなく、生命を脅かすかもしれないものは、夜の闇に紛れて膨らむ恐怖と同じだ。
ウィルは夜に現れ、行方不明の犬、スタンレーが病気に感染して、夜に帰って来る。
そして、アンドリューが祖父の部屋でうなされていたのも夜だ。
悪夢でうなされるように、自ずと夜への恐怖は増幅されていく。
だが、突然銃撃して来る二人の男と同様、疫病は必ずしも夜やって来るわけではない。
アンドリューは、子供が普通に感染する病気だったのではないか。
アンドリューの感染は、夜来る何かがもたらしたものではなく、火葬された祖父の部屋で偶然感染したのではないのか。
恐怖は猜疑心に変わり、そして、取り返しのつかない結果を招き、絶望へと繋がる。
そう、「それ」は、きっと絶望だ。推し測るすべもなく忍び寄り、突然頭を擡げるのだ。
本当に怖いのは疫病か人間か
面白かったなぁ
極限状態で表れる人間の本質
この世で何が怖いかって、人間が一番怖いんじゃないのと思ってしまう作品
謎の病気が蔓延する世界
森の中の一軒家で暮らす
父、母、息子と犬一匹の家族
ある時、一人の男性に
「水を分けて欲しい」と言われ、
その男性家族と共同生活をすることになるのだが…
日本で現在「水道を民営化するかどうか」が話題になっているけど
将来的には、人々は「飲み水」を求めて争い合うだろうと、よく言われている
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」のように
この映画で描かれるディストピアでも「水」が重要な役割を果たしている
食料を持つ家族と、飲料水を持つ家族が共同生活を始めるにあたり
上位に立つのは、飲料水を持つ家族
しかし、共に生活するうちに
「自分たちの聖域を奪われるのでは…」と疑心暗鬼になっていく
そこで人は「他人に対する寛容さ」を求められる
しかし、現実として、人は、どんどん疑心暗鬼に、どんどん狭量になっていく…
人は、ルールを作り、それが守られている間は安心して暮らしているが
それが破られた瞬間、平常心を失ってしまう…
その時、人間の本質が表れる
「外で何が起きているのかわからない」という恐怖が、人を不安にさせ、平常心を失っていく
この映画で描かれている恐怖は
ゾンビでも、疫病でもなく
人の心に潜む暗闇(ダークサイド)なのだと思った
それ<人間の狂気>は、世界が静寂した夜中にやってくる
まるで舞台劇のような密室劇で展開する異色のホラー
一味違う作品を求めている人にオススメの作品
ホラーではなかった
異常な状況下での心理スリラーで、不穏な空気感などは良かったと思いますが、ホラー的な恐怖描写はあまり無く、個人的には期待とは違っていました。
状況設定などは明確にされず寓話的で、一家族は一つの国で、主人公家族は恐怖を煽り武装するアメリカの暗喩かと感じさせられました。
だとすると、疑心暗鬼から他を虐げ、自国の未来を担う子を失うと思われる理不尽な結末は、希望が無さ過ぎると思いました。
象徴的な赤い扉は心の扉
緊迫感はあったけど…。
狂気的な猜疑心が呼ぶ悲劇
ファーストカットから引き込まれる作品。
ボロボロの身体の祖父を銃で殺し焼き払うというものものしいシーンから始まり、家族が感染力の高い「病気」から逃れるべく生活していることがすぐに把握できる。
謎の男の侵入から精神的な揺さぶりがとめどなく襲ってくる。
父親の狂気的とも思える警戒心と猜疑心に驚くけれど、家族を守るための行動として説得力があるのでどうしようもない。
頭に麻袋被せられた人間のビジュアルはいつ見ても不気味。
いくら信じられないからってそこまでせんでも…と正直思うけれど。
ウィルに水を飲ませるまでの矢つぎ早な尋問にはヒリヒリして堪らなかった。
どうにか信頼を得たウィルとキム夫妻とその子アンドリューと同居してからの日々は順調に見えるけれど、ほんの少しの刺激ですぐ切れそうな張り詰めた空気が絶えることはなく、彼らのかわす言葉の隅々まで油断ならないので観ている側のストレスも相当溜まってくる。
その最もたるのが二人の父親が向かい合って酒を交わしながらたわいもない話を繰り広げるシーン。
一人っ子だと身の上話をするウィルにほんの少し違和感を持ったら案の定、先の尋問にて「兄の家にいた」と答えていた。嫁の兄だと訂正は入るけど。
あの時ポールが嘘を付いたのかどうか、ずっと考えているけど分からない。とっさに出る言葉も酒の席での軽い話もうまく装うのはなかなか難しい。
しかし、隠し事は絶対にしていたと思う。祖父を焼いた時の高く上がった煙を目撃していないとは言わせない。
なにを隠していたのかもわからないので憶測でしかないが。そう思ってしまう自分もポールのように疑心暗鬼に駆られていることに気付く。
縛り付けとも取れるほどの家の掟に従いつつどこか危ういところのあるトラヴィスに注目しながら観ていた。
17歳という思春期真っ只中の彼からはキムに対する好意と欲が見え隠れする。
夫婦の会話を盗み聞いてその内容に笑う表情は可愛くも不気味にも見えた。
ただ、トラヴィスの欲望が物語を大きく引っ掻き回すわけでもなかったのが残念。
もっと取り返しのつかないことをしてしまうのかと思っていたのに。
安易なところだとキムを襲うとか、はたまたアンドリューを襲うとか…。マイルドにいっても自己処理のシーンは欲しかった。
終盤の大混乱、どうしてこうなった…。
犬は何に対してあんなに吠えて走り消えてしまったのか。帰ってきたときの傷は。
ウィルとキムはなぜ家を出て行こうとしていたのか。アンドリューはやはり感染していたのか。
それとも夢遊病だったのはトラヴィスで、先に感染したのも彼だったのか。
正直わからないことだらけなんだけどひたすら銃を向け合う家族たちの剣幕が恐ろしく息が詰まっていた。
これからどうなってしまうかと一寸先も見えない展開が面白い。
アンドリューを殺されたキムの最期の絶叫が頭にこびり付いて忘れられない。
”Kill me!!””殺せ!!”字幕の口調が大勝利。殺して、殺しなさい、とかじゃなくて。
そして結局ポール家は皆殺し、トラヴィスも無事感染、一貫の終わり。絶望のエンディング。精神崩壊待ったなし。
ディストピアと化してしまった世界で、あまりに強い疑心暗鬼がもたらした悲劇。
強すぎる疑いは真実を見えなくする。破滅をもたらす。しかし信じすぎても同じことが言えると思う。
どうすれば良かったかなんて一つもわからない。
ただ生きたかった二つの家族の悲しい結果がそこにあって、その先のことも容易に想像できる。
「なぜ疑うんだ」というウィルの言葉に胸を刺される。
余白の多さが尋常じゃなく、そのモヤモヤや物足りなさがまた後味の悪さを更に増してくるのでタチが悪い。好きだ。
世界観や設定は最低限しか示されず曖昧だけど、言動の強さから受け取れるものが多いので不満はない。
私にとっては余白を楽しめる作品だった。
明確に何かが夜に襲ってくるわけではなく扉を閉める理由もそこまで強くなく、謳い文句のミスリード感は否めないが。
「IT」とは夜中にやってきたウィルのことや病原菌などを指しているのかな。
トラヴィスの見る悪夢の内容が地味に恐ろしく、まんまと引っかかって怖がってしまった。
心理的な恐怖感だけでなくしっかりホラー的な恐怖も味わえたので満足。
感染者のボコボコのデキモノの気持ち悪さが最高。
とにかく全編に渡る強い緊張感が楽しく、また寿命が少し縮んだ気がする。とても好き。
心に潜む狂気
本作は、少し前に公開されたクワイエットプレイスと似たような設定で、世界を滅ぼした「何か」から身を守るために、人里離れた山奥に隠れて生活する家族の話となっている。
しかし、クワイエットプレイスより本作の方がよりダークで人間の内面や心理描写に焦点を当てており、外から迫る死の恐怖と、閉じ籠った家の中で疑心暗鬼になり、次第に狂気に飲まれていく登場人物が描かれている。
とりわけ心理描写の部分が凄まじく、外見的には普通にしている人物でも心は恐怖に蝕まれており、人間が内面から壊れていく様が丁寧に描かれているのが、恐ろしくも非常に良く出来ていると思う。
もしかしたら人類を滅ぼしたアレが、人間を内面から蝕んでいく物だったのかもしれないが、真意のほどはわからない。
映画を見終わっても「そういえばあの場面ってどういうこと?」など疑問な部分が何箇所かあったので、考察の余地がかなりあると映画だと思う。
細かい所では、作中で使われるガスマスクや銃器などの小物類が良く出来ておりチープさを感じさせないし、人里離れた山奥の自然が美しく撮られているのも良い。
本作はかなり低予算で作られた映画だそうだが映画の内容は申し分ないので、極限状態に置かれた人間の怖さや切迫した心理状態など、ハラハラした展開が好きな人にオススメしたい。
やっぱり人間同士の信頼って、大事ですね。
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