「みんな居場所がほしかった」あゝ、荒野 後篇 映画野郎officialさんの映画レビュー(感想・評価)
みんな居場所がほしかった
前後篇合わせて5時間と超大作だが、助長も物足りなさも感じず絶妙な重厚感でまとまっていた。CMを除くとテレビドラマの8話分ぐらいの長さになるので、連続ドラマもこれぐらいの創り込みができれば見応えあるものになるんだよね、きっと。
それほどこの映画には、多くの人の手間暇とお金が注ぎ込まれた結晶なんだと思う。
人は何のために生きているのか。誰しも生まれて死ぬまでの人生ずっと、自分の存在理由・価値、つまり居場所を探している。それは誰かと繋がり、必要とされることだ。
ただみんな平等で生まれてくるわけではない。平等に不公平なんだ。でもそんな世の中でも、それでも生きていかなくてはいけない。たとえ人種や生まれ育った環境の格差があろうと、逆境を跳ね返して強く生きなければならない。ずっと「希望という病」に侵されながら生きていくのだ。
自分の人生だからと言って、やっぱり自殺で片付けるのは悲しい。みんなやっぱりどこかで自分を殺すことには躊躇するけど、戦争や自爆テロは人の顔を見ないからできる。復讐が交錯する人間関係が描かれているが、憎しみの連鎖から何も生まれない。
「自殺防止フェスティバル」はすごくサイコパスだったけど、深く考えさせられるメッセージだった。
あと個人的に残っている言葉は、「中途半端な肢体で生まれて、完全な死体で死ぬ」。生きものはすべて死ぬために生まれて、死に向かって今を生きる。
高齢化社会、商売も生きるに関わること(結婚など)から、死ぬこと(葬儀など)に移ってきている。高齢者の娯楽だ。
アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞した菅田将暉の演技に真骨頂を感じる。ライバル役のヤン・イクチュンもどんどん味が出てくる。そんな彼らが魅せるボクシングシーンの臨場感は見応えがある。
あとこのご時世、おっぱいがたくさん出てセックスばっかしている映画でもある。笑
※前後篇共通レビュー