「因縁の戦いで得たものは、友情の消失でした。」あゝ、荒野 後篇 ガーコさんの映画レビュー(感想・評価)
因縁の戦いで得たものは、友情の消失でした。
プロボクサーとしての試験に合格し、ライセンスを取得したシンジとケンジ。
過去に消えた仲間のボクサーとの対決に燃えるシンジ。
対するケンジは、なかなか芽が出ず伸び悩み続ける日々…。
対照的な二人ですが、試合の日は刻々と迫っています。
「目の前にある相手をとことん憎め」とコーチから言われ、眼光鋭く睨みつけるシンジ。
しかし、ケンジは見ず知らずの相手を憎むことなんてできません。
それでも戦わなくてはならない現実の中、ある日ケンジは自分の親がシンジの親を殺していたという事実を知ってしまうのです。
ボクシングで成長しようと頑張ってきた仲間が、知り合ってはならない被害者の遺族だったとしったケンジ。
忽然とジムから姿を消した彼は、皮肉にもシンジとの試合を組んでもらうのでした…。
シンジからひたすら殴られるケンジ。
その姿は、亡霊のような死人のような、ただそこに立っているという虚無な存在。
自分という存在をこの場から消し去ってしまいたい気持ちが、ひたすら殴られるという皮肉な現場へと成り替わりました。
血みどろの試合の中で、二人は何を思っていたのか…。
表情でしか答えを見出せない所が、もどかしく深い世界を描き出していました。
韓国のヤン・イクチュンさんも、菅田将暉さんも演技の入れ込み方が凄まじかったです!
体作りを行い、プロのボクサーのように減量、増量しながら挑んだ撮影に驚かされました。
血みどろのドロドロした映像は、どこまでが本気でどこまでか演技なのか分からなくなってしまうような壮絶な映像でした。
まさに、底辺からのし上がって生きる、男と男の戦いの記録がここに描かれています。
菅田将暉さんとヤン・イクチュンさんに拍手です。