THE PROMISE 君への誓いのレビュー・感想・評価
全5件を表示
オスカー・アイザックがとにかく最高
主人公ミカエルを演じたオスカー・アイザックの、悲しみや苦しみ、絶望、そしてそれに耐える演技はもう最高だよね。
どうする事も出来ない強大なパワーに打ちのめされて打ちのめされて、必死に手を伸ばすもあらゆるものが滑り落ちていくような徹底的に追い込まれていく役をやらせたら至高の人。
見るからに可哀想なところもたまらんのよね。
そんなオスカー・アイザックをイジメ抜くために「ホテルルワンダ」でルワンダの大量虐殺を描いたテリー・ジョージ監督が用意した舞台はアルメニア人弾圧。それと男女のもつれ。
もう次から次へとオスカー・アイザックをイジメる為だけに都合よく悲劇が襲う。
観ているこっちも「なんてことだ」の連発で耐えられなくなりそうだが、そこは直接的なバイオレンス描写が少ないお陰でなんとなく耐えられる。
テーマは違うところにあるのでいいとして、物語の核は三角関係のロマンスで、時代背景的にアルメニア人弾圧があるって感じで、この時オスマントルコで何があったのか?を知るには適さない。
むしろ予備知識として先に知っておいた方がいいかもしれない。
まあ、第一次世界大戦が勃発し、イスラム教のオスマントルコでキリスト教徒であるアルメニア人が弾圧されたってくらいで大丈夫だけどね。
アメリカ人ジャーナリストのクリスは正義、信念、勇気を持った戦う人、一方のミカエルは穏やかで弱い耐える人、どちらも善人だがタイプが全く違う二人の間を揺れながらもアナの気持ちが移っていく様子は良かったね。
こんな酷いことが起きている最中だからこそとも言えるし、同じアルメニア人だからとも言えるし、真実の愛なのかもしれない曖昧さがいいよね。
アナの想いに応えたいミカエルも、持参金まで受け取ってしまった婚約者に対して裏切れない気持ちとの間で揺れに揺れて、それがそこら中で起こっている弾圧と相まって、悲劇を生む。
そう考えるとアナからの好意でさえオスカー・アイザックを苦しめるための罠だったんだな。
一見いいことのように思える持参金も友もね。
ラブロマンスと弾圧が相互に補完し合うような良くできたストーリーで面白い。
そこに耐えるオスカー・アイザックがプラスされて見応えも充分。
虐殺・・・悲しみの歴史
オスマン帝国が第一次世界大戦に参戦した事により、キリスト教徒である自国に住むアルメニア人が、敵に内通する可能性があるとの理由で迫害の対象に。
正義感の強いAP通信記者クリスを演じたクリスチャン・ベールの渋い抑えた演技が光っていました。
変わり果てた家族の姿に嗚咽する主人公ミカエル、銃撃を避ける為逃げ惑う人々、他者を助ける為に命を落とす者、献身的なアナの最期の姿が切なく悲しい。
小さな幸せを願って生きてきた人々の日常が、脆くも崩れ去る様に、胸が苦しくなりました。
BS - 日テレを録画にて鑑賞
トルコ政府は今日までこの罪を認めていない
映画「THE PROMISE 君への誓い」(テリー・ジョージ監督)から。
監督が手掛けた映画「ホテル・ルワンダ」も衝撃的だったけれど、
今回も、ドキュメント作品と間違えるほど緊迫した様子が描かれている。
作品概要では「150万人が犠牲となったオスマン帝国による
アルメニア人大量虐殺事件を題材に、
事件に翻弄された3人の男女を描いたヒューマンドラマ」とあったが、
映画のラストに、こんなメッセージが表示されて驚いた。
「1915年9月12日
フランス海軍は4000人以上のアルメニア人をモーセ山から救出した。
20世紀初の大虐殺で150万人のアルメニア人が命を落とした。
トルコ政府は今日までこの罪を認めていない」
製作国が「スペイン・アメリカ合作」とあり、何か意図的なモノを感じた。
日本といえば「トルコ」とは、親交が深いはず。
第二次世界大戦でも、日本に対して軍事行動を一切行わなかったし、
戦後も、日本に対して賠償金その他の請求を一切行わなかった、
さらに、1985年イラン・イラク戦争でのイラン在留邦人の救出に
トルコ航空機が出動、200名以上が救出されたことも記憶に新しい。
だからこそ、このメッセージが気にかかったのかもしれない。
見やすくできてる歴史メロドラマ
なぜこの恐ろしいアルメニア人へのジェノサイドが起きたかという点が全く語られないのと、タイトル(邦題)とエンドロールのお歌が古臭いのが気になりました。
ザ・プロミス 君への誓いってねぇ。
タイトルだけでは絶対に見ないですね。ごめんなさい。
お歌歌ってた人亡くなったんだってね。ごめんね。でも私はダサいと思う!
ではなんで見たかといえば京都シネマの名画リレーにかかったからです。そやもんで、どういう話かを調べたらアルメニア人へのジェノサイドの話だとわかり、見ることにしたわけです。
なぜ起きたかという点はこれから勉強しないといけないです。
私はまだ誰も殺していないけど、いつか殺されるかもしれないし、殺す側に身を置くことになるかもしれない。
その時に何をすべきかを自分で決めるために、知っておきたいのです。
歴史的なことはあまり描かれず、突然トルコのアルメニア人の日常は奪われ、強制労働に故郷帰還に故郷での虐殺に、ゲリラ戦…と目まぐるしく進んで行きます。
なんでこんなことができるんや、と、ミカエルと一緒に慄きながら観ます。
そこにミカエルとアナとクリスの三角関係が織り交ぜられるんです。
あんまり三角関係は好きじゃないのですが、この3人は正直で優しい人たちなので、みんな幸せになって!という気持ちでした。
ミカエルが婚約者がいるのにアナに惹かれたのは、そらよくないのでしょうが、仕方ないよ。
そして故郷に戻って結婚したことも、責められないよ。あの状況ではね。
そいでクリスがあんまりアナもミカエルも責めなくて、いい奴だった。
まあ一番はエレムがええ奴ですよ。トルコ人のボンボンで情に厚くて結局殺される。無駄な殺しをなんでするんかな。
遠くてから見ているとそう思います。
怪我して匿われた宿で、手当てしてくれるアナのお腹に思わず頰を寄せて抱きしめてしまったミカエルがめっちゃ可愛かったです。
アナ役のシャルロット・ルボンは、私の好みどストライクの美人さんです。
ポー・ダメロン(オスカー・アイザック)もそらメロメロになりますわ。
ポーダメロン(しつこい)の奥さんがかわいそうすぎました。婚約者を待って、子を宿したおもたら病んで、ほんで子を抉り出されて殺されて…
この映画はアルメニア系アメリカ人の資産家が制作費のほとんどを出したそうです。
みんな知ってくれってことやなぁと思いました。
アルメニア人大虐殺の中でもがく3人の男女
ストーリーは
1914年 オスマン帝国の南端の街、シランに住むミカエルは、貧しいながら学業優秀で人助けのために奔走する好青年。街の有力者に気に入られ、400金貨を与えられ、首都コンスタンチノーブルにある医学校に通わせてもらえることになった。3年の学業を修めて医師になって帰り、学費提供者の美しい娘と結婚する「約束」だった。ミカエルは、婚約者を残し、喜び勇んでロバに乗って首都に向かった。
コンスタンチノーブルは、何もかも洗練された都会で、大学は素晴らしい設備を誇っていた。ミカエルは、叔父の屋敷に滞在する。大学ではエミールという学生と親しくなる。彼は、政府高官の息子で立派な屋敷に住んでいて、プレイボーイで有名だった。ある日、ミカエルは美しい画家志望の娘、アナを紹介される。彼女の知性溢れる魅力に、ミカエルは強い憧憬を抱くが、彼女にはアメリカ人のジャーナリスト、クリスという恋人がいた。毎日が、刺激に富み、希望に満ちた、日々だった。
しかし突然、第1次世界大戦が勃発し、オスマン帝国は参戦する。
同時に今まで仲良く暮らしてきたオスマン帝国のアルメニア人に対して、トルコ人が迫害を始める。あちこちでアルメニア人が経営する店や事務所が、襲撃にあって暴力を受けることになった。ミカエルは、大学から軍に引き立てられて、徴兵に応じるか、刑務所に行くかと、問われ窮地に立っていたところを、政府高官の息子で親友のエミールの助けで、医学生として特別待遇で徴兵を逃れることができた。しかし、街ではアルメニア人への迫害が激しさを増し、街を歩くことさえ危険になってしまった。
ある夜、ミカエルとアナは、教会のミサの帰り、トルコ人愛国者たちに襲われて怪我をするが、小さな宿屋の主人に助けられる。その宿で、アナとミカエルは同じアルメニア人同士の心と心が結びついて、愛し合う。翌朝、アナとミカエルが家に帰ってみると叔父が憲兵に連れ去られていた。ミカエルは婚約者の父親から受け取った400金貨を掴んで、叔父を連れ戻しに軍隊本拠地に行く。ところが叔父の救出どころか、叔父は銃殺、ミカエルは拘束されて、労働キャンプに送られる。オスマン帝国南部の鉄道施設に駆り出され、わずかな食料で重労働に従事させられた。怪我人や病人は、虫のように殺されていく。いつまでもそこに居たら酷使された末、殺されることが分かっている。ミカエルは工事現場のダイナマイトを爆破させて、逃亡する。
ミカエルは、何日も何日も素足で歩いて、遂に生まれ育った故郷の村に帰って来る。村ではアルメニア人の若い男達はみな連れ去られた後だった。かつて裕福だった婚約者の両親は、火のない家に隠れ住んでいた。両親はミカエルを喜んで迎え、娘と結婚させて、山間の小屋で新婚生活をするように段取りをしてくれた。人里離れた小さな山小屋で、二人は野菜を育て、つかの間の静かで幸せな生活を送る。しかし妻が妊娠すると栄養不足から病気になり、村に住む母親のところに預けなければならなくなった。
ミカエルはアナとクリスが近くの赤十字病院にいると知って、彼らに妻たち家族を安全なところに連れて行ってもらうように頼んだ。
アナとクリスは避難民と孤児たちを馬車に乗せて赤十字から出発し、ミカエルの家族を連れ出そうとして、村に着いたが、時すでに遅く、村はトルコ軍に襲われて妊娠中の妻も父親も誰もかも惨殺されていた。
軍人たちに追われて、クリスは逮捕されコンスタンチノーブルに戻される。罪状はスパイ罪。ジャーナリストとしてオスマン帝国軍が、国内のアルメニア人を虐殺していることを世界に発信していたことを追及される。スパイとして処刑されるところを、軍人になっていたミカエルの親友エミールが救いの手を差し伸べる。エミールはクリスを逃して、ミカエルを安全なところに逃がしてやりたかったのだ。エミールの連絡を受けて、オスマン帝国駐在アメリカ大使がやってくる。大使はクリスを釈放させて、マルタに脱出する手はずを整える。クリスは大使に伴われ、フランス軍の軍艦が停泊する海岸に向かう。しかし、エミールはオスマン帝国軍人として、あるまじきことをした、とされて銃殺される。
沢山の孤児や怪我人を保護しながら軍から逃げて来たミカエルとアナは、さらに大きなアルメニア人やクルト人難民と合流し、海岸線に達する。海には、クリスを乗せたフランス軍の軍艦が停泊していた。軍艦が難民を収容するためにボートを出し、海岸までたどり着いた難民からボートで救出する。ここでクリスとミカエルとアナは感動的な再会を喜び合う。オスマン帝国軍は、ついそこまで迫っていて砲弾を開始する。アナは孤児たちとボートに乗り込み、同じ船にミカエルも乗る。しかしそのボートは砲弾を受けて沈没。ミカエルは沈んでいく孤児たちを救出することができたが、すでに海底を深く沈んでいくアナを救うことができなかった。
アナを愛した二人の男は永遠にアナを失った。その後、クリスはミカエルにアメリカのビザ発給に力を貸し、アメリカでの生活を援助した。ジャーナリストとして活躍しその後スペイン戦争で取材中、命を失った。
というお話。
15世紀に東ローマ帝国を亡ぼして、世界にその繁栄を誇ったオスマン帝国の終焉を背景にした物語。メロドラマだが、ナチによるユダヤ人迫害と同様に語られるオスマン帝国によるアルメニア人大虐殺という歴史がテーマになっている。150万人のアルメニア人が虐殺された。いまナチによるユダヤ人ホロコーストを否定する人はいないが、いまだアルメニア人大虐殺をトルコ政府は公式に認めも、謝罪も補償もしていない。
はじめは、イスラム教のオスマン帝国で、少数民族のアルメニア人やクルト人はトルコ人と仲良く共存共栄していた。しかしイスタンブールなどの大きな都市で貿易や金融業で成功した裕福なアルメニア人商人らはカトリックを信奉。西欧との交流を通じて、アルメニア民族意識に目覚め、民族独立を願うようになってきた。一方のトルコ人のなかで、ロシアに占領されて難民となってオスマン帝国に逃れてきたモスリム難民たちは、クリスチャンのアルメニア人を憎悪した。アルメニア民族独立派と、トルコ愛国青年派は、互いに急進化し、過激化していった。
第一次世界大戦でオスマン帝国が同盟国側に付くと、ロシアは連合国側で参戦しているため、アルメニア人とトルコ人の対立は決定的になる。第一次世界大戦に敗れたオスマン帝国は崩壊し、トルコ共和国となり、1991年、アルメニアはトルコから独立した。いまだにトルコ政府はアルメニア人大虐殺は、オスマン帝国政府の計画的で組織的に行われたという、アルメニア側の主張を認めていない。アルメニアは独立したが、クルド民族はいまだにトルコでは迫害されており、ISISやシリア内戦の問題解決を、より複雑で困難なものにしている。
映画の中で、アナはパリで教育を受けたヨーロッパ人で、芸術を愛する知的な女性。クリスは世界の紛争地を取材するジャーナリストで、オスマン帝国軍によるアルメニア人虐殺を世界に向けて報道する。アナとクリスの信じる自由、平等、正義を語る結びつきは強い。そのアナの自由でしなやかな強さや、孤児たちへの献身的な態度に魅かれる、田舎出の医学生ミカエルが、アルメニア人迫害の嵐の中でアナと結ばれる。しかしアナを愛しながらも、義父との「約束」のために約束通りに結婚をし、子供をもうける。彼はアナと再会したときに偽らずに事実を伝える。隠れて、ひとりきりで悲嘆にくれるアナを見つめるクリスの苦渋にみちた姿。哀しい三角関係だ。ドラマテイックな背景に、もがき苦しむ3人の男女、、、これこそがメロドラマの骨頂です。それを美形のクリスチャン ベイルが演じるので、観ないわけにはいかない。いつも戦争映画を観るときは、このような状況に自分が居たら、自分に何ができるかと、考える。そのために観る。
昨日まで仲の良かったお隣さんが、戦争が勃発したとたんに敵となり、憎みながら殺し合うようになる、偽政者による民心操作の恐ろしさ。多民族への敵対心をあおることによって、愛国心を培養しようとする。時の権力者が、敵でもなかった人々を敵であるかのように発言し始めるとき。注意しなければならない。本当は敵なのか。他民族同士が憎しみ合い戦争が起こると、誰が得をするのか。権力者のうしろに誰がかくれているのか。目をそらしてはいけない、と改めて思う。
なお主題歌をアメリカのシンガーソングライター、クリスコーネルが作曲して自分で歌っている。素晴らしい曲を歌い上げていて、感動的だが、これを吹き込んですぐ彼は、オーバードーズで亡くなった。とても惜しい若すぎる死だった。
全5件を表示