劇場公開日 2017年7月15日

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「じわじわと来るタイプの感動」彼女の人生は間違いじゃない Jolandaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5じわじわと来るタイプの感動

2021年5月16日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

難しい

幸せ

衛星で部分的にチラ見していたのを、やっとこさ冒頭からラストまで鑑賞。

なんだか、こう、、良質なプロレタリア文学作品を読みきった後のような、不思議な爽快感がありました。

監督の作品は「ヴァイブレータ」「さよなら歌舞伎町」に続き、おそらく三つ目。
DVD特典のスタッフプロフィールで知りました、監督が自分の親とタメだということを。そして、もともとピンク映画出身の人だということを。

確かに性愛の占める割合が大きいな、とは思ってた。
今作品はテーマがテーマなのでエロ描写少なめ。「さよなら~」とかと比較すると、かなり少なめ。
けれど、エロと向き合ってきた人が作った映画というだけで、デリヘル嬢が主人公の映画でも、信用できるというか。興味本意でネタにしていないことがわかる。

風俗嬢には「自分ぶっ壊し願望」がある人が多い、という話を聞いたことがある。
気持ちは分からないでもない。この映画のみゆきも、そうだったのかもしれない。母は他界し、補償金は父親のパチンコ台に吸い込まれていく日々。週末、渋谷という別天地に繰り出して全てをぶち壊すことで、現実からの逃避を試みていたのだろう。

廣木作品の好きなところは、淡々としていて説明が少なく、感情に溺れないところ。
東京の人間との間にも齟齬はあるし、まだまだ問題は山積している。でも、ちょっと嬉しいことがあって頬の緩むような日もある。そういうことの積み重ねで、人は前に進んでいく。それは何でもないことのようでいて、実はとても凄いことだ。

デリヘル本社の窓から飛び降りた女の子の為に、花を供えて手を合わせるみゆき。喪失を経験した人間は、喪失に対して敏感になれる。

「ヴァイブレータ」というロードムービーで魅せた監督、「さよなら~」でも本作でも、高速バスのシーンがいいですね。
淡々とした日常のシーンから一転、雄大な景色が開かれる。けれど同時に流れてくるのは、胸に迫るような扇情的な音楽。

ミッシングピース(観てないシーン)を埋め、最後まで観て、「ちゃんと観といてよかった」と思いました。「好きな監督の名前」、一個増やします。

yolanda