「ある黒人女性歌手のドキュメンタリー」ホイットニー オールウェイズ・ラヴ・ユー bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
ある黒人女性歌手のドキュメンタリー
夢見た場所にたどり着いた時
一人ぼっちになっていたとしても
愛の中に強さを見出せますように
ホイットニーが一番大切にしていたと言う、The greatest love of all の最後の一節。関係者へのインタビューと数多のプライベートフィルムを含む映像で構成された、まさにドキュメンタリー映画で、彼女の歌う姿がチラ見せなのは難点でした。
にしても、酷く哀しく、なんて困難な、そして短い人生だったことか。アメリカは戦争の国。その攻撃の矛先は時に黒人に向けられる。あるプロデューサーだったかの言葉ですが、重いです。ホイットニーは単なるスターではなくゲットー出自の黒人の希望だった。なんて言う話なんかは胸を締め付けます。
ボヘミアン・ラプソディー的な、音楽家を題材にした感動映画を期待されると、完全に肩透かしを喰らいます。
満たされないココロを埋めることが出来なかった、あれほどの才能に恵まれながらも、強く生ききれなかった「一人の黒人女性」のドキュメンタリーと、覚悟して見てほしい映画でした。
91年スーパーボウルでの、4拍子の「星条旗よ永遠なれ」には、改めて感動した。
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1/5追記
top of top に立った者だけが知る孤独と深淵。マジョリティからの賞賛と同胞黒人からのバッシング。夢見た場所にたどり着いた彼女が見たものは、思い描いて来たものと、あまりにもかけ離れていたんだと思う。
インタビューには、私は心を歌っているだけだ、と話す一方、舞台裏ではジャネット・ジャクソンを貶し、母親の腕の中に逃げ込むホイットニーの姿は、ラミ・マレックが演じたフレディとだぶってしまう。
向き合うモノの大きさを思い知る時、孤独の深淵が口を開ける。
音楽映画としては失格モノかも知れませんが、実録映画としてはとても良く出来てると思う。