「水と冒険心だけ?」フォース・プラネット odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
水と冒険心だけ?
1時間半の映画の内99%は宇宙船内の孤独な主人公の静かな葛藤の様を描くだけ、これは心理描写映画です。ポスターは例によって客寄せのための捏造です。
宇宙船の中で何をしているのかというと彼の発明品らしい岩石から水を作る装置の修理です、植物プラントの世話はまるで老人の盆栽いじりに見えてくる・・。
確かに地球上の水は岩石の変成で滲み出たと言う説もありますが宇宙船に積める岩石量ではたかが知れていますよね、むしろ水素燃料の燃焼を利用した方が面白い。実際の宇宙飛行士は尿も濾過して再利用している様ですね。
只管、水に執着して描きますがむしろ酸素の方が重要でしょう、事実NASAが去年、火星探査機パーシビアランス搭載の「MOXIE」で約5gの酸素生成に成功したというニュースがありました。火星大気のCO2を電気分解して酸素を取り出すらしい。
火星有人飛行には宇宙線被爆や長期の無重力での体の損傷問題など山積、居住区の自転で人工重力を得ていたようだが宇宙ステーションではお馴染み、積載量の限界で端から片道飛行というのも倫理的にどうなのだろう。
原題は未知への接近(Approaching the Unknown)なのに科学的監修はおざなり、非情な任務を担う宇宙飛行士の精神面にスポットをあてているがこれまたチンプンカンプン、孤独に強いのは宇宙飛行士の重要な資質とでも言いたいのか、妻の文学賞の式典で噛みしめる孤独感の独白は何なのだろう。
いくら孤独に強いと言っても危機管理も地上部隊との協調性もなく独断専行では公人としての資質も疑わしい、ジャングル探検ならいざしらず火星へは冒険心だけでは行けませんよね。
プロットも無茶苦茶、失敗を隠し遠隔操作まで切断して命令違反、漂流していた筈なのに火星到着とはどういうマジック?
クレジットをみるとNHKがサンダンス・インスティテュート(ロバート・レッドフォードの非営利団体)と共同で製作支援をしているようだ。確かにこの地味な教育映画風なところはお堅いNHK向きなのかもしれないが火星有人飛行に向けての技術的課題すら曖昧だし宇宙への興味ならナショナル ジオグラフィックやBBCのドキュメントの方が見応えがあるでしょう。