「ハイドリヒをやるくらいならヒトラーをやれ!」ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
ハイドリヒをやるくらいならヒトラーをやれ!
1941年、ナチス占領下のチェコスロバキアに、ロンドンにあるチェコ亡命政府からの密命を帯びていた2人の若者、ヨゼフ・カブチーク(キリアン・マーフィ)とヤン・クビシュ(ジェイミー・ドーナン)が降り立つ。彼らの目的はナチスのナンバー3と言われるラインハルト・ハイドリヒの暗殺。わずかな頼りでレジスタンスの仲間に合流し、綿密な計画を立てるのだが・・・
てっきり暗殺そのものがメインテーマとなってるのだと先入観を持っていたのですが、それは間違いでした。ハイドリヒはナチ秘密警察を束ねる国家保安本部(RSHA)の長官で、ヒトラー、ヒムラーに次ぐ親衛隊の実力者。ゲーリングから「ユダヤ人問題の最終的解決」の委任を受けており、ホロコーストの最高司令官ともいうべき存在であった。「プラハの虐殺者」という通り名を得るほど、反体制派の指導者層を次々と逮捕、処刑していった人物だ。
暗殺指令はエンスラポイド作戦と呼ばれ、ヨゼフとヤンは忠実に作戦を練る。毎日どこを通って自宅へ帰るのか、このカーブでは徐行するからここで狙おう、などと。しかし、レジスタンスのメンバーの中には暗殺計画に反対する者もいた。ハイドリヒを殺したところで、報復措置として一般市民が虐殺を受けるとか、代わりの総督が新たにやってくるだけとか・・・彼らの中にも葛藤があったのです。
暗殺決行の日はとてもスリリング。前日にはヤンがパニック障害を起こすなどして、責任がヨゼフずしりとかかる。しかし、実行する段になってヨゼフの自動小銃が作動しない。ヤンは手榴弾を投げる。緊迫感溢れる暗殺も失敗に見えたが、しばらくしてハイドリヒは病院で死亡したというニュースが入るのだった。
もちろんレジスタンスの中にも裏切り者はいる。実行犯を密告すれば懸賞金が出るだとか、そんな甘い誘惑に騙されて密告するものの、逆に他の仲間の名前を吐けと拷問される。可哀そうだったのは、ヨゼフたちを匿っていた一家。教会へ逃げろと教えてくれたモラヴェックおばさん以外にも息子のヴァイオリニストが拷問される。レジスタンスは皆青酸カリのカプセルを常に携帯しているが、このおばさんも持っていたのだ。
最終的には教会に立て籠もったパラシュート隊の7人の籠城戦。息苦しくなるほどの銃撃戦が繰り返され、胸がしめつけられる思いです。それでも皆青酸カリカプセルを持っているし、銃弾は自分用に1つ残すようヨゼフが伝えるのだった・・・
なんとも重厚なドラマ。これが全て実話だというのだから驚きです。結局はナチによる報復で5000人以上が虐殺されたというテロップにも考えさせられる。映像がまたオレンジ色っぽい仕上がりになっていて、手持ちカメラによる揺れで緊迫感を生み出しているのです。また、ナチ以外はみんな英語だったのでわかりやすかったですよ。
今晩は。
今作を見てから、もう5年・・。
けれども、尋常でない緊迫感は良く覚えています。ナチスからの激烈な拷問シーン。そして、ラストのヨゼフとヤンを含めたエンスラポイド作戦に関わった戦士たちの姿。
ナチスの壮絶な報復シーン。
テロップで流れた事実。
凄まじい、反戦映画でした・・。