「題材は良いが、つまらない作品」嘘を愛する女 yahiroさんの映画レビュー(感想・評価)
題材は良いが、つまらない作品
予告が面白そうだったので以前から期待していました。ですが、予想していた内容とけっこう違っていたのでビックリしました。
面白いか面白くないかでいうと、面白くなかったです。ですが、予告を見た感じでは「面白そうだ」と思いましたし、映画の最初のほうは実際に面白かったです。最初の二十分ぐらいに面白い要素が凝縮されており、中盤だらだら、後半で少しだけ盛り上がる、という感じでした。ラストはもやもや。
結婚を考えている恋人がじつは偽名で、勤務先も免許証もデタラメ、突然クモ膜下出血により、意識不明に。結局、この人だれなの?
なんだか宮部みゆきの小説みたいですし、ベタですが面白いのでここまではありです。しかし、映画を見る前、てっきり桔平は「失踪」するものだと思ってたんですが、まさか急病で倒れる展開とは。これだと、桔平は川原の母親に「会いたくなかった」のか、「病気により会えなかった」のかはっきりせずにモヤモヤ。クモ膜下出血じゃ、特にあのタイミングで発症する必然性はないわけで、「会いたいか、会いたくないか」という観点でみれば全く無関係の、急病ということになりますよね。失踪などの、自発的な行動なら、まだ理解できるんですが。
しかし、特に警察に追われてたりとかそういうわけではなく、警察からは「ま、結婚前で良かったよね(笑)」と言われる始末。視聴者としても、「うん、そうだ」と思わざるをえません。なぜ川原はあそこまで執拗に真実を探し求めたのか、いまひとつわかりませんでした。
そして探偵役の吉田鋼太郎ですが、映画においていい味出していたのでよかったと思います。ですが、探偵業をやるにしてはちょっとヘボすぎませんかね。自分の元妻のマンションをストーカーみたいに覗いてるし、しかも目立つダサい野球帽被ってるし、こんなやついるかよ、と。そういう役回りなのかもしれませんが、普段が前述の通りヘボすぎるためにたまにかっこいいこと言ってもあまり響きませんでした。いずれにしても、プロで報酬を受けてやってるわけだから、もうちょっとプロっぽい、かっこいいところを見せて欲しいな、と思いましたね。口だけじゃなく。主人公の川原も、「稼いでいる」という設定なのだから、同僚の親戚だからという安易な理由で選ばず、もっと凄腕の人を雇えばいいのに。
あと、川原の職業なんですが、これ、なんなんでしょうね。乳製品メーカーの商品開発室の役職者とか?ウーマンオブザイヤーに選ばれるにしてはあんまり人望なさそうだし……。このあたり結構謎です。仕事もできる感じがあまりしない……。
中盤はけっこうダラダラですが、ギャグテイストな場面も多く、これはこれでよかったです。しかし、もうちょっとテンポよくやってもよかったような気がします。
そして終盤の真実が明かされるシーンでは、ちょっとホラータッチなんですが、真実が明かされてもそれで身元を消すような行動に至るのか? ちょっと疑問。というか、家そのまま残っとるんかい!とちょっと突っ込んでしまいました。ローンとか完済してたんだろうか。稼いでる医者っていう設定だったからそうなのかな…にしても、それならそれで、文無しの状態で川原のマンションに転がり込んだ理由もよくわからんし。実は桔平は隠れて銀行口座持ってたとか? でもそれなら、口座から引き落としたりしたら証拠が残るから失踪にはならないよなあ…このあたりぜんぜんわかりません。僕が何かを見落としているだけなのかもしれませんが。そもそも、川原の家に転がり込んだ件も、身元もよくわからず、住所もないような人間を家にあげたりするにしても、そこに至るまでの経緯が描かれていないからよくわかりません。桔平は、もともと住んでいる東京の家があって、そこを引き払って川原のところにきたんだろうか?
他の人も書いていたんですが、二人の間に愛情があるようにはとても見えませんでした。お互いがお互いの打算のために一緒に暮らしてる感じ。でもそれは悪いことではなくて、すべてを知ったいま、「これから一緒に愛を育んでいこう」みたいな感じにも読み取れるので、うまく演出すれば希望をもつ感じにまとめることもできたのではないでしょうか。「本当は愛はなかった」みたいな描写があったら、ラストがより際立って、スッキリしそうですね。
この映画をダレさせる要因のひとつとして、「桔平のことが知りたい」→「でも、真実は怖いから知りたくない」この流れが何度も繰り返されることで、視聴者がイライラするということが挙げられます。視聴者のみならず、吉田鋼太郎もキレてます(笑)。これ、もしかしたら逆だったら面白いんじゃないかと。「桔平のことなんて知りたくない」→「でも、本当は知りたい(知りたくないが勝手に情報が入ってくる)」この流れならダレずに見ていられる。なんだかんだ真実を探していかないと映画として成り立たないので(笑)、こっちの流れのほうがいいんじゃないかと思いました。
全体的に画面が地味で、音楽も全く抑揚を感じさせなかったので、もうちょっと絵的に工夫が欲しかったところです。この映画からあの予告編が作られたのはすごいと思う。予告を作った人は作るのがとてもうまいのではないでしょうか。
色々書きましたが、題材は悪くなかったです。先がわからなくてワクワクしたのは事実。でも、もうちょっとダレさせない工夫があればさらによかったです。