劇場公開日 2018年3月17日

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「観る者の教養が試される映画」修道士は沈黙する 鑑定人トマスさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0観る者の教養が試される映画

2018年3月25日
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G8財務相会議の会場を舞台にした、著名銀行家の謎の死。ミステリーの形態をとってはいるが、火曜サスペンス劇場のつもりで鑑賞する作品ではないことをお断りしておく。
世界はいつまで経っても、富める者は富み、貧しき者は貧しきまま、貧困問題は解決しない。世界各国の政治家達が数えきれないほど会合を開き、その道の「プロフェッショナルたち」が対応策を話し合っているにも関わらず。修道士の沈黙は、形骸化した国際金融システムと、事なかれ主義の政治家達に対する失望と怒り、欺瞞に満ちた世界に対する警鐘を意味しているように感じられた。
登場人物の会話は倫理学や哲学の趣きを多分に含み、なかなか歯ごたえがあり、ある意味味わい深い。観る者の教養が試されると言えるだろう。
舞台であるハイリゲンダムは実際にサミットが行われた地であり、ご当地とグランドホテルの美しさも一見の価値あり。

鑑定人トマス