「さほど面白くないが、抜群のエピソードもある」甘き人生 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
さほど面白くないが、抜群のエピソードもある
1999年、イタリア・トリノ。
ジャーナリストのマッシモ(ヴァレリオ・マスタンドレア)は、久方ぶりに実家のアパートメントに戻った。
部屋を売り払うために残された品々を整理するためだ。
整理するうち彼は昔のことを思い出す。
1960年代末、9歳のときに母親が急死したことを。
そして、幼い自分はそのことを受け容れられなかったことを・・・
といったところから始まる物語で、亡き母の思い出とその後の人生が混じりあって描き出されていきます。
画面にはどっしりとした重厚感があり、取り留めないといってもいいほど交差し連なるエピソードを一本の映画にまとめるのは、さすが1939年生まれのベテラン監督らしい手腕。
ですが、映画はあまり面白くない。
主人公が母親の死の真相を探るでもなし(彼は母親の遺品をみただけでパニック発作を起こしてしまうのだから)、年老いた父親との間の確執が描かれるでもなし、知り合った女性との恋愛描写が深いわけでもない。
ただ、主人公がまだ若く、紛争中のボスニア・ヘルツェゴビナに戦場ジャーナリストとして赴いた際のエピソードが興味深い。
民家の裏庭でそこの主婦と思われる女性が射殺され、血を流して倒れている。
離れた一室には、椅子に腰をかけ、黙々とビデオゲームをし続ける少年がいる。
主人公の同僚は、その少年を見つけて、椅子ごと少年を運び、女性の死体の前に座らせ、写真を撮る。
この少年は主人公のメタファーであり、母親の死を受け入れられずに、激変する社会の中で孤独でいることを示しているのだろう。
といいうことで、映画全体は(母親の死の真相も予想がつくし)さほど面白くはないのだけれど、このエピソードだけで評価アップ。
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