「主人公に感情移入できないまま終わる」甘き人生 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
主人公に感情移入できないまま終わる
予告編にある通り、子供の頃に母を失った男の物語だ。母が何故死んだのか、どんな死に方をしたのか不明なまま、男は長じてジャーナリストになり、危険地帯をはじめ世界中を飛び回る。しかし依然として母を失った喪失感は消えない。
話は理解できるが、男の気持ちが理解できない。どうしてそこまで死んだ母親に
こだわるのか?
高圧的な父親に対する反発や世の人々についての猜疑心もあっただろう。それが子供の頃からずっと消えず、素直に人を愛せない人間にしてしまった?
もしこの作品が子供の頃に芽生えた猜疑心がその後の人生を左右したというテーマなら、お金と時間をかけて映画を作る動機としてはあまりにも弱すぎる。かといって、前世紀後半のヨーロッパの社会状況を考えてみても、この映画に結び付くような出来事は思い当たらない。
ということは、トラウマを抱えた人間が自分自身とどのように向き合っていくかという極めて個人的な人生観がテーマである可能性が高い。長い年月をかけて真実に辿り着く、時間軸のロードムービーだ。それにしては主人公の動機が分かりにくく、まったく感情移入できないまま、映画が終わってしまった。
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