「パチンコマネーで無理矢理作らされた映画です。TVシリーズのファンは観ないでください。」EUREKA 交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション SSYMさんの映画レビュー(感想・評価)
パチンコマネーで無理矢理作らされた映画です。TVシリーズのファンは観ないでください。
ってキャプションを映画のポスターなり公式HPなりに記載しとくべきだった。むしろ付いてたほうが作り手の最低限の誠意くらいは感じられたかもしれない。万が一、観てしまったとしても自分の自己責任と割り切れる。そんな映画。
本当に観たことを後悔しました。観終わった後、自分の中でエウレカはTVシリーズだけだと決めました。怒りも湧いたが、それ以上に虚無感が襲ってきた。
全編通して作りが雑。シリーズへの思い入れとか抜きにしても、単体の映画作品としてお粗末でした。作り手のやる気が感じられないというか、主張したいことや表現したいものもないのに、予算だけ与えられたから手癖や自分の趣味でアニメを作ってみた。そんな印象です。
TVシリーズエウレカセブンには、はっきりと作り手の「新しいものを作る」という気概が感じられました。今作にはそのような気概は1ミリもなかった。
以下から、本編の内容に触れます。
まず台詞が下手くそ。
序盤のエウレカとホランドの戦闘シーンですが、終始ホランドが説明台詞のオンパレードで萎えます。コックピットで誰が聞いてんだかわからない独り言をベラベラと喋り続けます。デコイを使ったことなんて、台詞で説明されんでも見たらわかるわ。脚本家は素人なのか?
エウレカとアイリスのヨーロッパ逃避行ですが、なんかスパイ映画で観たことあるような展開でした。アニメでボーンシリーズがやりたかったのかな?と思いました。
ただ最後まで観たうえで振り返ってみると、ここが唯一この映画のマシなところでした。
ストーリー的にもエウレカとアイリスが心を通わせていく過程が丁寧に描かれていて、まだ期待しながら観ることができました。
途中でデューイが何回も攻めてくるけど、あれだけの戦闘力がありながら5回も失敗するなんてマジで馬鹿なんじゃないかと思いました。刀振っただけで衝撃波が数十メートルも伸びるのに、生身の人間2人(内1人は子供)に勝てないなんてありえないでしょう。そんな強いのに勝てないってことは、そいつ馬鹿じゃん、と観てる人間はそう思います。映像の嘘というものを悪い方向に使っていると思いました。
なんかターミネーターのパロディがありますが、正直「こんな駄作作っといてふざけてんじゃねえよ」って怒りが湧いてきます。
最終的には部下をおつかいに出したらあっさり成功するとか。いや、部下使えるんかい。反逆罪で逃亡中だから派手な行動はできないとか理由があんのかと思ったけど、普通にヨーロッパにまで部隊展開できるとかなんなんだ。できるんなら最初からそうしとけ。本当に脚本が粗い。
スーパー6。マジでいらない。演じた声優さんとかデザイナーさんには申し訳ないんだけど、本当にいらない。まずスーパー6になんの興味もないし、そもそも戦闘シーン以外で出てこないから愛着が湧きようもない。
戦闘は、序盤の街中でのKLF戦は暗いしロボがどっちも地味なデザインでどっちがどっちだかわかりにくかったが、動きがあったのでそこそこに見応えはあった。
問題は後半。合体した後はビーム撃ち合ってるだけの大味な戦闘で全くおもしろくない。パロディ臭いのも嫌だった。
ホランドはなんだったのか。今作のホランドはレントンやエウレカと面識がない。無関係である。声が違うのを置いたとしても、これもうただの新キャラだ。
それでもムーンドギーやギジェットが来て新月光号に乗るくだりはちょっと期待した。KLFも積んでると言ってたし。
結果は期待ハズレ。それも大ハズレ。
なんか知らない間にホランド以外全員退艦してた。いや、そこ、端折っちゃだめなところだろう。デューイとのくだらない追いかけっこには尺使ってたのに、配分がおかしい。
そして特攻。今まで観た映像作品の特攻シーンで一番安い特攻だった。そもそも今どき特攻なんてやらんで欲しい。
オールスター感のある映画なのにハップやマシューは出てこないし、そこらへんも中途半端でモヤモヤした。
終盤、エウレカが新型のウルスラグナに乗ってデューイとアイリスのもとに向かいますが、速攻でデューイにやられて大破。マジでなんなの、という感じです。前半では女子供相手に遅れをとっていたのに巨大人型兵器は一撃って。
ラストの展開は完全に逆襲のシャア。
まずつっこみたいのが軌道エレベーターの安全設計。壊れたら地上に甚大な被害をもたらすような軌道エレベーターなんて造られるわけないだろう。原発事故を経験した日本人がいまだにこんな展開をやってるのが信じられない。
アニメに現実の基準を持ち込むなよ、という返しは無意味かつ作り手の力量のなさを証明するだけです。アニメだからこそ、細部にはこだわって矛盾をなくするのがプロではないでしょうか。アニメだから目を瞑って、は甘えです。この映画、全編通してそういう甘えが多いです。
ブルーアースとグリーンアースの人々が協力して軌道エレベーターの落下を防ぐという展開も、そもそも本編で両陣営の対立がそこまで描かれてないので感動しない。
移民排斥デモのシーンがあったが、移民問題とラストの軌道エレベーター落下は全く別の問題だ。移民排斥を訴えている人達だって、いきなり移民は全員殺しますってなったら「ちょっと待てや」となるでしょう。
展開は逆シャアだけど、感情的に盛り上がることはなく、むしろオタクが悪ノリしてるようで白けました。
レントンは最後の最後にほんのちょっと出てきます。ANEMONEのあのラストはなんだったのか。
最後にエウレカとレントンが会えたのでハッピーエンド。文句ないでしょう?って作り手が思ってたとしたらファンを舐めるなと言いたい。
ついでにドミニクはどこにいったのか。一度も映らなかった。
レントンの登場が中盤位からで、ホランド達ゲッコーステイトのメンバーも絡めてKLF戦でドンパチドンパチやってたら、映画としては満足いったと思います。というかそれが観たかった。今作はエウレカの成長物語なのでレントンを出したら意味がないというのはわかっているが、だったらもう少し上手く作れよ、と大声で文句を言いたい。
ですが、作り手がそういうわかりやすい面白いものを作りたがらない理由もわかります。最初から面白いとわかってるものを作るのは、面白くないと思います。
結局、このハイエボリューション三部作が失敗に終わったのも、作り手にパッションがないのにパチンコマネーで無理矢理作らされたから、の一言に尽きると思います。まあ内部事情を知らないので本当に無理矢理作らされたのかどうかは知りませんが、作品から情熱は感じませんでした。
ここに書いてない細かいことでも不満はいっぱいあります。一つだけ挙げると、アイリスの「おばさま」呼び。エウレカもアネモネもおばさま扱いされる歳じゃないだろうに(24とかだろ?)。そもそも今どきおばさん扱いされそうな年齢の人にだっておばさん呼びはしない。親戚の叔/伯母くらいか。
終盤ではエウレカのことをおばさま連呼するし、聞いていて不快とはいかないまでも違和感が拭えなかった。そこらへんの作り手の無神経さもやっぱり作品に出てると思った。