「青春のもやもや感」そうして私たちはプールに金魚を、 sannemusaさんの映画レビュー(感想・評価)
青春のもやもや感
女子中学生がプールに400匹の金魚を放つ、という実際にあった珍事件がテーマ。
事件の大きさと本作の世界の大きさがこれ以上ないくらいにぴったりマッチしていて。
何もないようでなんでもある、地方都市ならではの閉そく感と
青春のもやもや感を気だるい女子高生たちがうまく表現している。
映像もフレッシュで現代感があって鋭い印象。
主人公が観客に語りかけるシーンも多くて、ドキッとした。
コミカルなシーンもあり、シリアスっぽいシーンもあり。
映像のテイストも、中身もいろんな要素が詰め込まれてるんだけど、それが実生活をそのまま表しているような気もする。
退屈、興奮、倦怠、遊び、スリル、夏、プール、祭り、カラオケ、女友達、恋愛、友情、信頼、馴れ合い、妬み、あきらめ、希望、静、動。
いろんな感情や状態が矛盾せず、混沌と共存しているのがリアルライフなのだ。
タイトルの「そうして私たちはプールに金魚を、」の理由ははっきりとは説明されないんだけど、言葉ではない、状況や感情で99.9%説明されている感じがあって。むしろ小気味よい爽快な鑑賞体験。
ぐれるでもない、親に歯向かうでもない、行き場のない、表現もしがたい「澱」のようなものはどこに行くんだろうか。
懐かしいかつての青春の回顧とともに、
おそらく今も溜まっているであろう澱を、今の私はどう処理しているんだろうか、とはっとさせられた。
コメントする