喜望峰の風に乗せてのレビュー・感想・評価
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コリン・ファースだからこそ実現した非冒険映画
航海計器の開発と販売で生計を立てている男が、経済の困窮とメディアの煽りによって、無謀にもヨットによる単独無寄港世界一周クルーズに挑戦する。彼は冒険家でも、さらにヨットマンですらないのだ。この信じがたい実話の映画化が、コリン・ファース主演で実現ことには意味がある。まるで講義にでも出かけるかのようなブラックスーツの上に黄色いヨットウェアを着て、家族や友人が見守る中、もろに不安げな表情で港を出港していく主人公の姿は、ファースがかつて演じた否応なく難題に挑戦せざるを得ない男の横顔と重なるからだ。だから、この映画に冒険ドラマのスリルを期待しないで欲しい。案の定、出航後間もなく自然の驚異にさらされて目標と居場所をなくす主人公の葛藤のドラマというのが、正しい見方だと思う。同時に、これは従来のジャンル映画のルーティンを覆すチャレンジングな1作なのだ。
戻れない・・・進めない・・・
美談でもなんでもない
なんか想像と全然違うところに着地。
実話ベースというところで、創作では思いつかないようなバッドエンドが待っている。そこに魅力を感じるけど、まあ複雑なお話です。
順調そうな中盤までは想像通りだが、終盤から?が出てくる。あれ、なんか重要なポイント見逃したかな、みたいな。ただ、孤独で狂ってきたのか、とか。で、まあ、自作自演ということで、なるほど、となる。
すごく情けない話で美談でもなんでもない。しかし、その弱さが人間くさいし、なんか共感するところでもある。すべてを捨てて逃げ出してしまっている。ようするに負け犬の話。
題名忘れたがショーンペンの平原で孤独死した少年の作品があったが、美談ぽく扱われる、あれより個人的には好みかな。人間てこんなもん。思春期に思想や哲学持ったってなんの役にも立たない。
勇気づけられるとか、何にもないが、そこが印象的な映画。
社会の実像
単独無寄港世界一周ヨットレース
1968年に単独無寄港の世界一周ヨットレースが開催される。
主人公(コリン・ファース)は妻(レイチェル・ワイズ)の不安をよそに参加することにする。
しかしヨット技術が優れているわけでもなく、勇敢というよりも無謀な感じ。
出航後ただちに問題が次から次へと起き、重大な決断を強いられる。
どうみても無茶だ。
悪魔のささやき
慈悲とは
原題は“The Mercy”
観終わったあとだと考えさせられるものがあります…主人公にとっての慈悲とはなんだったのか。
あんなに苦しめられた孤独によって、その“選択”が最後にできたということ…?
うーん…
実話らしいということしか知らず、悩める中年男性の感動冒険ものだと思って観はじめたら まんまと打ちのめされました。
そりゃ自然は厳しいだろうけど、主人公がこの境遇に陥るに至った原因は ほぼほぼ人災よね。
準備大事。リスクマネジメント大事。
映画としては地味なんですが コリンファースのどんどん追い詰められていく演技が見事。
疲労と孤独と罪悪感から 少しずつ主人公の精神が衰弱してく様子が見て取れて、後半は怖いくらい張り詰めてました。
いや〜、でもなぁ…
自分は妻に一番感情移入して観てしまいました。
こういう、言い出したら聞かない旦那持つと大変だよね泣
【素人ヨット乗りが、自らの哀しき嘘故に、独りきりの海上で起こしてしまった事の顛末を描く作品。】
あまりストーリー的に面白さがない❗
コリンの演技力が見応えあり
行くも地獄、戻るも地獄
映画雑誌・映画秘宝の読者プレゼントで当選したムビチケで、大津アレックスシネマにて、本作品を父親と一緒に鑑賞。
率直な感想と致しましては、
『博士と彼女のセオリー』のジェームズ・マーシュ監督による、英国が誇る名優コリン・ファース主演の過酷なヨットレースに挑んだ男の実話を基にした作品と言うこと以外には、特に事前の予備知識もなく、この映画のポスターと邦題から、希望に満ち溢れた美談の映画だと期待して鑑賞に臨みましたが、その予想に反して、とてもとても切なく哀しい悲劇的な映画でした。
このレースでの出来事は、鑑賞後に知ったのですが、欧米諸国で半世紀に亘り映像化や舞台化が繰り返されてきた有名なお話らしいのですが、日本ではあまり知られていないらしく、当然、私も初めて知った内容でしたので、邦題の爽快な言葉を鵜呑みにしていたので、鑑賞の際には、そのギャップの落差にかなり驚かされました。
ですので、「単独無寄港世界一周ヨットレース」に挑戦をした人物の実話と聞けば、成功者のスリリングな冒険譚をついつい期待してしまいますが、このお話の場合は全く違いました。
名だたる熟練ヨットマン達に混じり、船舶用測定器を発明した起業家でアマチュアセーラーである主人公ドナルド・クローハースト(コリン・ファース)も無謀ながらもこの単独無寄港世界一周ヨットレースの「ゴールデン・グローヴ・レース」への参加を表明。
仮に、優勝すれば、業績不振な自社製品の宣伝にもなり、愛する妻子4人の家族にも多額の賞金と名誉を贈れるといった、まさに一石二鳥ならぬ三鳥にもなる千載一遇のチャンスとの思いからでした。
彼自身に対する大いなる過信もあったでしょうが、何よりも、彼の周囲のロドニー・ホールワース記者(デビッド・シューリス)や協賛したBBC放送をはじめとしたマスコミ関係者など各人の思惑も交錯する中、無謀にも、自ら設計したヨットは未完成の準備不足のまま船出をせざるを得なかったのでした。
そして、ドナルド・クローハーストのその葛藤と焦燥から、経済的な破綻と恥辱を恐れるあまりに、為してはいけない過ちを犯し、キリキリと精神的に追い詰められていき、誰しもが心の奥底に秘めていそうな弱さや愚かさ、そして、それらから生まれてくる狂気の沙汰を、まざまざと見せつけられるのでした。
簡潔に言えば、悲劇的な事件を描いたとても陰鬱な映画とも言えるでしょう。
ドナルド・クローハーストなる人物は、このヨットレースにおいては、さぞや卑怯な人物だったのかも知れません。
しかし、この様な出来事をしでかした、そんな人物だからこそ、あの英国の国民的俳優コリン・ファースの様な、愛らしい人懐っこい笑顔が似合う俳優が演じるとなると、あたかも無謀な挑戦も愚かな嘘さえも、すべて彼なりの差し迫った理由があったからだと素直に納得させられてしまいました。
それに、洋上での相次ぐトラブルや悪天候、船酔い、そして大海に中に浮かびながら、それに反比例するかの如く、狭苦しいキャビンに身を置き、永遠かにも思える孤独感などとの闘いなど彼の置かれた境遇にも同情的にもなり、自分にも同じような驕りや弱さがあるのではないかと自問自答させられるのでした。
今回の『喜望峰の風に乗せて』という邦題に対して、この映画の原題「THE MERCY」の方が何とも辛くその哀しさをより端的に表していました。
字幕では、これを「救い」と訳していましたが、この言葉には「慈悲」という宗教的な意味合いも含んでいるらしいのですが、主人公ドナルド・クローハーストの身勝手とも言える逃避行動を、この「THE MERCY」という言葉で済ませたい気持ちは分からないでもない。
しかしながら、この一連の行為に対し「救い」や「慈悲」などの念などと呼ぶべきではなかろうとも思われてならないのです。
経済的な破綻や恥辱を乗り越えるだけの僅かな勇気さえあれば、神様には、彼に全く異なる救いの手のご計画があったはずだと思いたい。
しかし、否が応でも、その最終的決断からも、ドナルド・クローハーストには罪や咎から解放される事を確信しての行為なのかと思えば、「救い」でもあり「慈悲」でもあるのかと、思い悩まされました。
この映画の巷間での評判や評価も事前に特段の知識も何も知らずに、『博士と彼女のセオリー』のジェームズ・マーシュ監督と英国が誇る名優コリン・ファース主演の映画ならば是非とも鑑賞したいと思い、映画雑誌・映画秘宝の読者プレゼントのムビチケに応募したところ、見事に当選し、今回、琵琶湖の浜大津港の傍に位置する、大津アレックスシネマまで、鑑賞に臨みました。
私的な評価と致しましては、
成功譚ではなく、また後味が悪い陰鬱な作品と言うことから、映画の好みからすれば、賛否はかなり分かれるでしょうけれど、私は観て良かったでした。
コリン・ファース演じる主人公ドナルド・クローハーストが逃げ場のない状況下で狂気に満ちていく様子や、当然の事ながらも、セーリングに伴うトラブルの改善をするべく、マストの支柱によじ登るなどセーリングの基礎を習得した上で、見事に演じ切っている点には感心させられましたし、彼独特のチャーミングな顔付きには、いつもながら惹き付けられるものがありました。
また、妻クレア・クローハースト役のレイチェル・ワイズや、ロドニー・ホールワース記者役のデヴィッド・シューリスなども実に好演していた点。
そして、昨年(2018年)2月に惜しくも死去されたヨハン・ヨハンソンの最期の映画音楽の3作品のうちの一つとして、エンディングロールで流れる優しく響く調べがたまらなく切なく、心に染み入った点も良かったです。
ただ、彼の置かれた境遇がどうであれ、愛する者が待っているにも拘わらず、彼の採った最終的な決断については、私には、どうしても合点が行かず共感し辛い事から、五つ星評価的には★★★☆(70点)の三つ星半の評価とさせて頂きました次第です。
逃れられない状況に置かれた男の切ない決断
予想外な展開。
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