「コリン・ファースだからこそ実現した非冒険映画」喜望峰の風に乗せて MPさんの映画レビュー(感想・評価)
コリン・ファースだからこそ実現した非冒険映画
航海計器の開発と販売で生計を立てている男が、経済の困窮とメディアの煽りによって、無謀にもヨットによる単独無寄港世界一周クルーズに挑戦する。彼は冒険家でも、さらにヨットマンですらないのだ。この信じがたい実話の映画化が、コリン・ファース主演で実現ことには意味がある。まるで講義にでも出かけるかのようなブラックスーツの上に黄色いヨットウェアを着て、家族や友人が見守る中、もろに不安げな表情で港を出港していく主人公の姿は、ファースがかつて演じた否応なく難題に挑戦せざるを得ない男の横顔と重なるからだ。だから、この映画に冒険ドラマのスリルを期待しないで欲しい。案の定、出航後間もなく自然の驚異にさらされて目標と居場所をなくす主人公の葛藤のドラマというのが、正しい見方だと思う。同時に、これは従来のジャンル映画のルーティンを覆すチャレンジングな1作なのだ。
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