「サクセス率がもっとあがるように。」5パーセントの奇跡 嘘から始まる素敵な人生 ピラルクさんの映画レビュー(感想・評価)
サクセス率がもっとあがるように。
ヘレン・ケラーの言葉、「障害は不便だが不幸ではない」。
この映画をみると障害者を不幸へと追い込むのは、周囲の対応、広くは社会によるところが大きいとわかる。ただし不便で留めておくには、障害者自身も障害を受容し残された能力を伸ばして活かし、人一倍の努力をしないと周囲と和していくことができないことを同時に描いている。
簡単なことではないから障害者のかたを「チャレンジド」と呼ぶ。避けられない挑戦を受けねばならないかたたちである。
本作の主人公は5つ星ホテルで働きたいという強い夢が彼自身を救った。もちろん前向きに生活してきたおかげで発達したともいえる秀でた嗅覚、味覚、記憶力も彼を救った。生来のマイルドな性格も彼を救った。よき友達に巡り合えたことも彼を救った。
まとめてみると、かなり幸運なケースではないかという気がする。チャレンジドのサクセスストーリーである。心を強く持ち社会に出る「チャレンジド」に挑むだけでもハードル高いのに、認めてもらい渡り歩くところにまで達した。「障害は個性のひとつ」と朗らかに言ってのけられるレベルである。
視覚障害者でこのようなサクセスに漕ぎつけられた人は5パーセントいるかいないか、たぶんいないような気がする。というようなことを考えていたら、5パーセントは視界の率からきてるけど、視覚障害者の社会適応率に重なって読めてきた。
チャレンジドさん頑張ってください、なんておこがましくて言えないけど、この映画をみた健常者が頑張れることと言えば、挑戦の受け入れ側としてハードルを低くしたり、サポートを手厚くしたり、自暴自棄になる底のときでも寄り添っていられる人でいたりすることだろう。つらいときに寄り添うのは家族とか恋人とか身近な人の役目と思い込みがちだが、たまたまそばにいた親切な他人に救われるケースを、実に多くの映画が描いてきたように思われる。