「ハイジの物語を、巧く2時間にまとめ上げた良作」ハイジ アルプスの物語 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
ハイジの物語を、巧く2時間にまとめ上げた良作
定期的に海外でも映画化作品が作られる有名な作品「ハイジ」。日本ではもちろん「世界名作劇場」が有名だろう。むしろ、日本ではアニメ作品のイメージが強いので、実写化かつ海外の映画作品として観るのはどうかな?と思ったけれども、予想以上にしっかりとした作りで感心した。当然のことながら、30分のアニメで1年間放送しただけの内容を2時間に収めるには大幅な短縮も必要だし、ややダイジェスト的になるのもやむを得ないところであるのは理解した上で、むしろこの映画に関しては、あれだけの内容をよく2時間にまとめ上げたなぁという感嘆の方が先に出る。あれが足りないこれが足りないと数えるよりも、いやいや2時間でハイジの物語の大事な要素をきちんと掬い取って映画にまとめられているということに非常に好印象を抱いた。さすがに、最初はあれだけ煙たがっていた孫娘ハイジとの間に絆が芽ばえていく過程の最初の様子がだいぶ弱かったのは気になるものの、限られた時間の中で、ハイジが持つストーリーの要素を巧く抽出し、凝縮して表現できていたと思う。なかなか良かった。
児童向けの作品でもあることから、子供向けに内容を分かり易く表現していたり、子どもでも分かるような喜劇が設けられていたりして、そういう部分でも、誰でも見られて頼める安心印がついた感じだし、「ハイジ」の物語を観たいと思った時には、やっぱりこういう牧歌的かつ文芸的な物語が安心するというのは間違いない。そういう意味でも、良かったと思う。
今回のハイジはとかく可愛らしかった。というか、あまりのも愛嬌のある美少女で、ハイジのイメージにしては可愛すぎではないかとも思ったが、しかしながら彼女には溌剌とした躍動感と演技力があったため、可愛いだけのハイジではなく、ちゃんとハイジとしての役柄の存在感を表明していて、まったく違和感はなかった。クララも美人でよかったし、ペーターがユニークないい顔をした少年を起用していて、見事にハマっていた。ペーターはあのくらいのファニーフェイスの方が役柄に見合っている。そして、ロッテンマイヤーさんが何気にコメディセンスを持ち合わせているようで、要所要所で喜劇的な演技も使ってくれるので、ただ憎たらしいだけでなくちょっと愛着も覚えるようなところがあり、苦々しいシーンがあってもちゃんとそれをフォローしてくれるような感じがして、全体的に絶妙に構成された良作だったなぁと感じた次第だった。
よく知った物語でも、改めて作られた新しい物語を見てみると、新たな発見があったり、新たな魅力を見つけたり、あるいは今まで気づかなかった細部に目が行ったりということがあるもの。寧ろ、知ったつもりになって、実は理解していなかった部分に気づくということもあったりする。あぁ、そういえばこういう物語だったなぁ、としみじみ感じながら、新鮮な気持ちでハイジの物語を堪能できた。それに私は元来、「ハイジ」や「赤毛のアン」や「若草物語」などと言った欧米の古き文芸作品が大好きなのだ。私の期待は十分に満たされた。重箱の隅を突こうなんて気分は起こらなかったし、むしろ優しい気持ちで映画を楽しめた。評価の☆は作品の出来というところから言えば3.5が妥当かとも思ったけれど、観た後の心地よさや満足感に嘘は付けず、☆4つにしてみました。