「唯々煮染められた土地・・・」ビジランテ いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
唯々煮染められた土地・・・
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かなり心をやられる作品である。それは三兄弟の話ということ。モデルとなったロケーションが隣の町ということ。そして、余りにもドラマとしての濃すぎるテーマであること。
ディテールの部分、ストーリー展開等、ご都合主義的要素は存在しているのだが、しかしそれを超える程の熱意を観客にぶつけてくる力を持った展開である。ファムファタールとしての篠田麻里子のしたたかな存在感、それぞれの兄弟のキャラのアクの強さ、周りを囲む脇役達のドス黒さ、そしてそんな人物達が跋扈する寂れ掛かる町・・・ マッチポンプのように利権を創り出す政治家と裏で暗躍するアウトロー。土地に縛られる兄弟達の滑稽なほどの右往左往は、まるで自分の人生を投影されているようでかなりの身震いが止まらない上映時間であった。ただ、自警団の件、そして作品名、その自警団に入団する若者と、出稼ぎの中国人の件がどうも本分の軸とはあまりリンクしないように思えるのだが、この辺りの繋がりが知りたいものである。
いずれにせよ、この年の瀬も押し迫った中でこれだけの強烈なカウンターパンチを浴びせられた作品を鑑賞できたこと、感謝以外に発する言葉がみつからない。手に汗握るストーリーの進み具合、人生の理不尽と抗う情熱、そして泥を啜ってでも生き残ろうとする浅ましい人間共の悲喜交々。ラストのデリヘル嬢の疲れ切って眠る車中のみが幸福である皮肉をしみじみと感じ取れた良質の作品であった。辛いけれど目を背けてはならない・・・
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