「青春の傷」南瓜とマヨネーズ ニックルさんの映画レビュー(感想・評価)
青春の傷
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そもそも作曲家が曲を書くために完全なるニートになる必要はないだろう。それなのに一種盲目に献身的に水商売を始める女。こういう字面で言えば痛い臼田あさ美を魅力的に見つめ続けるカメラ、視点が素敵だ。
そんな彼女は深い考えなしに光石研と愛人契約を結び、あっさりと彼氏である太賀にバレる。独りよがりかもしれないにしろ、彼女には彼女なりのやり方や彼氏に対する不満があり、ここでも視点は女を見つめ続ける。寡黙に見つめ続ける(ように演出する)だけで映画は面白いのだということをここ最近の日本映画は忘れていたように思う。
ここから、彼女はかつて最愛だったオダギリジョーに再会し、またもあっさり関係を持つのだけど、ここは自分は胃を締め付けられるような気分だった。同時に当たり前に2人の男を同時に愛するという事を表現してある事が新鮮でもあったけれど。
女の重い好意に甘えてしまっていた太賀の側の痛みもしっかりと、最近の音楽業界っぽさの真実味の中に描かれていた。残酷なほど辛辣だったり、昔の仲間とのヒリヒリした感じだったり。
そんなヒリヒリを側で眺めている事しかできない存在だった女は男が去ると同時に浮気相手のオダギリジョーの元からも去る。なんというか定石通りなんだけど、オダギリジョーを振り負かすという所まで行けない所がまた痛々しい。
青春って終わってみれば傷ばかり、そんな感慨を抱いた。傑作。
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