「【哀しみを抱えた三つの家族を描いたアンソロジー。三つの物語が連関しており、三つの家族に仄かな希望が刺す展開も人間性全肯定をベースにした傑作、秀作を今作後、世に出し続ける中野量太監督らしい作品である。】」沈まない三つの家 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5【哀しみを抱えた三つの家族を描いたアンソロジー。三つの物語が連関しており、三つの家族に仄かな希望が刺す展開も人間性全肯定をベースにした傑作、秀作を今作後、世に出し続ける中野量太監督らしい作品である。】

2024年9月5日
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鑑賞方法:VOD

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1.【神田家】
  両親から離婚を告げられたマヤとカナの高校生姉妹。
  どちらと暮らすかは、任せると母に言われ、マヤとカナは悩む。
  マヤは母に願い、恋人と会うが、母に”あの人、私を性の対象にとして観ているよ。”と告げる。
  吃音のあるカナは、スーパーで万引きをしてしまうが、両親はナカナカ迎えに来ない。
  そんなカナに、優しく接する店長は、3H待ったカナにプリンを上げて、更にはお土産まで持たせてくれて返してあげるのである。

2.【相模家】
  スズカは、軽い気持ちで父に迎えを頼む。だが、父は途中で交通事故に遭い、帰らぬ人になる。自責の念に駆られたスズカは父の末期の病を患う伯父の元に通い、彼を彼女なりに励ます。そして、スズカは万引きしていたスーパーの店長に”万引きしていました。”と言い、二万円を渡し、戸惑う親友のツルミと共に帰る。
  スズカはいつも、伯父に”お父さんに会ったら・・。”と頼みごとをしていたが、伯父はスズカの前で、笑顔で川に飛び込む。その後、スズカは伯父が遺した手紙を読む。

3.【最上家】
  スーパーの店長は、ゴーグルを掛けてボンヤリ川を眺めている妻の元に来る。そして言う。”もう、良いじゃないか。帰ろう。”と言って妻の手を取る。

<ご存じのように、中野量太監督は、今作を含めた多数の短編を発表した後、2016年に傑作「湯を沸かすほどの熱い愛」を総なめにし、且つ邦画でも貴重なオリジナル作品で勝負し、結果を残して来た映画監督である。
 今作には、中野監督ならではの人間性全肯定の姿勢が仄かに描かれ、傷ついた三つの家族が徐々に再生していく様が、巧に連関した構成で描かれている。
 このような作品を作り続けた結果、「湯を沸かすほどの熱い愛」「長いお別れ」「浅田家!」というヒューマンドラマの秀作、傑作が産み出された事を考えると、意義深い作品であるし、中野監督の確かなる才能を感じさせる作品でもある。>

NOBU