「科学にとって重要なのは、「巨人の肩の上に立つ」精神」エジソンズ・ゲーム セッションさんの映画レビュー(感想・評価)
科学にとって重要なのは、「巨人の肩の上に立つ」精神
発明王として知られるトーマス・エジソンの、知られざる裏の顔とは…?
幼いころに伝記で読んだ、彼の傑出した功績からは想像もできないような、
勝つためなら手段を問わない卑劣な姿に、衝撃を覚えた一作でした!
19世紀後半のアメリカを舞台に、電力の供給方法を巡って、
直流派のエジソンと、交流派のウェスティングハウス&ニコラ・テスラ
が繰り広げた「電流戦争」の様子を描きます。
シャーロック・ホームズやアラン・チューリング、『スタートレック』のカーンなど…
孤高の天才が世界一似合う男ベネディクト・カンバーバッチは、
今回もこの偉大な発明家を好演。
単に冷徹かつ頭の切れる人物ではなく、
家族を深く愛し、「人を傷つける発明」は行わないという流儀を貫く彼を、
説得力バツグンの演技で体現しました。
そんな彼と息子が交わす「モールス信号のやりとり」は、
ささやかながら家族の絆を感じる良いシーンでしたし、
「エジソン夫婦の新婚旅行先」や、妻がエジソンに頼んだ「あるお願い」
といった伏線が回収される展開にも、胸を打たれるばかりでした。
一方のウェスティングハウスは、周囲への思いやりが深く、決して礼儀を欠かない性格であるものの、
時折はさまれる回想によって、過去のある経験にずっと苦しんできたことが明らかになります。
この両者の、多面的な人物描写を丁寧に重ねる脚本は、まさに一級品の出来栄えでした。
そんな二人の激しい攻防を描く本作は、
戦いの結果を示すだけでなく、その後彼らが交わす会話まで捉えて幕を閉じます。
そこに込められたメッセージは、
科学者にとって重要なのは、他人をおとしめて自らの才能を誇示することではなく、
他人の発明を尊重し、「巨人の肩の上に立つ」精神を常に持つことである
というものだと受け取りました。
曲がりなりにも理系の院生として研究活動を行っている私にとって、
この映画は、原点に立ち返らせてくれるような大切な一本になりました。
不満を挙げるとすれば、写真でも有名な「テスラの放電実験」を、
現代の撮影技術で再現してほしかったというぐらい。
トム・ホランドやニコラス・ホルトといった英国俳優の演技も光る、素晴らしい作品でした。
この作品は「ワインスタイン事件」に巻き込まれ、一時は公開も危ぶまれたのですが、
巨匠マーティン・スコセッシによる全面サポートもあって、
製作者たちの思い通りに作品を完成させられたようです。
スコセッシ、ほんとにありがとう!
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