「泣ける」あしたは最高のはじまり Takashiさんの映画レビュー(感想・評価)
泣ける
南仏コートダジュールの海辺の町で、観光客を乗せるヨットの仕事をしながら、毎日がバカンスのような気楽な暮らしを送るサミュエル(オマール・シー)。そんなある日、かつて関係を持ったことすらよく覚えていない、クリスティン(クレマンス・ポエジー)と名乗る女性が現れ、生後3か月の赤ん坊を「あなたの娘、グロリアよ」とサミュエルに託していく。慌てたサミュエルはクリスティンを追ってロンドンへと向かうが、とある事情から心に傷を負い、子育てにも自信を失くした彼女は、どこかへ消えてしまう。
言葉も通じない異国で立ち往生、財布を落として全財産を失くしたサミュエルを救ったのは、彼にひと目惚れしたゲイのベルニー(アントワーヌ・ベルトラン)だった。TVのプロデューサーのベルニーは、サミュエルにスタントマンの仕事を斡旋し、一人では広すぎる家にグロリア共々居候させてくれる。
それから8年、グロリアは明るくたくましく聡明な少女に成長し、スタントマンとして大成功を収めているサミュエルの優秀なマネージャーとして、しょっちゅう学校を休んでは、撮影現場に同行していた。もはや娘というよりも、サミュエルの立派な相棒だ。二人を支えてきたベルニーは、未だ恋人募集中ではあるが、グロリアのおじのような存在として絶大な信頼を得ている。3人はあらゆる意味で“普通じゃない”家族になっていたが、誰よりも幸せいっぱいの家族でもあった。 だが、ひとつだけ問題があった。あれ以来、一度も連絡の取れない母親のクリスティンのことだ。サミュエルはグロリアに、“ママは世界を股にかける敏腕エージェント”だから会えないと嘘の説明をしていた。それだけではなく、母親の名をかたって、昨日はロシア、今日は中国からと、嘘のメールをグロリアへ送り続けていた。
幼い頃は、無邪気に興奮していたグロリアも、最近では「仕事のジャマはしないから、ママに会いたい」と懇願していた。ベルニーはバレる前に本当のことを打ち明けろと忠告するが、サミュエルはグロリアを傷つけることだけは、どうしてもできなかった。
そんな時、本物のクリスティンから突然、グロリアにメールが届く。裁判やDNA検査でグロリアを取り戻そうとするクリスティンだが、紆余曲折を経てグロリアが病気で長くないことを知りサミュエルのもとで暮らすことに。最後はサミュエルのナレーションで楽しい日々を振り返りながらグロリアは死んでしまう。悲しい結末で泣ける作品。