劇場公開日 2017年10月27日

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「黒人の絶望」ゲット・アウト mark108helloさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5黒人の絶望

2021年10月31日
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鑑賞方法:VOD

怖い

興奮

黒人の白人に対するコンプレックスと白人の黒人に対する絶望的なまでの人格無視が根底にある反吐が出るような話。これはある特定の秘密結社の話しではなく白人全体に潜む圧倒的な支配意識が、この話の様な特殊な家族と一族にカモフラージュされているが、KKKと何ら変わらない。「白人至上主義団体」とされるが、正確には「北方人種至上主義」(ノルディック・イデオロギー)で、主に黒人、アジア人、近年においてはヒスパニックなどの他の人種の市民権に対し異を唱え、同様に、カトリックや、同性愛者の権利運動やフェミニズムなどに対しても反対の立場を取っているこの集団はマニフェスト・デスティニーを掲げ、プロテスタントのアングロ・サクソン人(WASP)などの北方系の白人のみがアダムの子孫であり、唯一魂を持つ、神による選ばれし民として、他の人種から優先され隔離されるべきである、と主張する。ヒトラーが掲げたレイシズムに基づくアーリア人純血主義も根底には支配されるかもしれないという恐怖感が同様に流れ、その恐怖の裏返しとして徹底した他人種排除行為に至る流れも根底には同様のものがある。
名前の由来はギリシャ語の「kuklos(円環、集まりの意)」の転訛と英語の「clan(氏族、一族)」を変形させたものと言われる。別の説として、ライフル銃の操作音が起源という説もあり、アーサー・コナン・ドイルの短編『オレンジの種五つ』で紹介され世に広まったとされる。

アメリカやドイツのこういった過激な民族主義には恐らくバルト海や北海周辺の民族がバイキングとして略奪や入植行為とキリスト教徒の文化的衝突が恐らくかような極端な思想の母体になっているのであろうと思う。

途中まで閉じたコロニーに外界から生贄を連れ込むパターンは『ミッドサマー」や「ウィッカーマン」を想起させる展開であった。その根底にも同様の民族の移動と衝突、そして部族の外界からの遮断と維持のノウハウが、同様な事態を生み出しているのだという事がはっきりする。

但し物語としては大変面白かったのでこの星の数とする。

mark108hello