「家族とは個人の集合体」ミッドナイト・バス ao-kさんの映画レビュー(感想・評価)
家族とは個人の集合体
上映時間157分。やや超尺な上映時間でありながら、実に落ち着いた演出で、ある一組の家族の物語を紡いでいく。根底に流れるテーマは家族の再生ではあるものの、あくまでも家族は個人の集合体である様を映し出す。
故にこの家族はそれぞれに悩みを抱える。自分の生き方、働き方、そして家族との接し方。それぞれが求めているものは近いはずなのに、ベクトルの向きが違っている。いや、交差してすれ違っているのかもしれない。誰が悪い訳でもない、けれどもうまくいかない。優しさが生む不器用な登場人物の姿は大なり小なりどこの家庭でも思い当たる節があるのではないだろうか。
やがて登場人物たちはそれぞれの答を見出していく。誰に頼る訳でもなく、誰かに諭される訳でもなく、その答を各々で導いていくその結末は寂しくも頼もしくも映る。劇中の祖父が言う「男親は扇の要だ」というセリフはこの物語を集約しているのではないだろうか。要が家族を繋ぎ止める。しかし、一つ一つの軸が違う方向を向くことで扇が綺麗に広がるように、この家族の選択は幸せなものであってほしいと願ってしまう。
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