「地味だけどよくできた幕内弁当のような映画」ミッドナイト・バス TAKAさんの映画レビュー(感想・評価)
地味だけどよくできた幕内弁当のような映画
久しぶりにちゃんとした映画を観た、そんな気にさせてくれる良作です。自分にとってちゃんとした映画とは、大げさで仰々しい、或いは、禍々しいネタを一切使わずに観衆を物語に引き込んでくれる、そんな映画のことを意味しますが、本作はまさにその映画。さっぱりとした幕内弁当を食べたような適度の満腹感があってしばらく心地よい余韻を味わいました。ちょっと褒めすぎかもしれませんが小津安二郎映画のような無駄のないセリフと「間」、さりげない小道具で、夫婦の離婚によって傷つき、一度は離れてしまった家族間の絆がゆっくりと修復されていく様がよく描かれています。俳優さんもみなうまい。ちゃんと相手のセリフを聞いてお芝居している感じがとても心地よい。特に主役の原田氏の演技がなかなか魅せる。うまく説明できないけど、特にセリフがなくても「間が持つ」感じがある。これって多分、人間関係を描く際に俳優として大事な才能だと思う。今後の更なる活躍を期待したいですね。それと予告編にもでてきた「扇の要」の話はなかなか深い話でちょっと考えさせられました。多分、これこそわれわれ現代人が密かに探しているものだとおもう。誰もがみな少しずつ寂しくて、それゆえ「要」となるものを探している。本作から、その答えそのものではないけれども、そのことについて考える良い機会をもらった気がしました。脂ぎっていないさっぱりとしてゆったりとした味わいの「幕の内弁当のような映画」(笑)を探している方、多分、この映画は当たりです。本作にも出ている長塚京三氏が出演した「ぼくたちの家族」が良かったって方にもお勧めしたいですね。
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