「フィールグッド・ムービー。それ以上でも以下でもない。」世界にひとつの金メダル 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
フィールグッド・ムービー。それ以上でも以下でもない。
馬術の障害飛越競技でオリンピック金メダルを獲得した実在の選手と気難しい馬ジャップルーの栄光までの物語。フランス自国では恐らく英雄的な人、及び馬なのであろう。日本にも、オリンピックで国民的アイコンになったアスリートってたくさんいるものね。思い入れがある分、気合の入った映画作りをされていて、彼らが愛されているのを感じるような気がしてくる一方、実話であることと、主人公が自国を金メダルに導いた英雄であることが窮屈に働いてか、あまり物語としては冒険が出来ず、極めて分かり易い所謂フィールグッド・ムービーとして完成したような印象で、それもまたいとをかし、ながらも、やっぱりちょっと物足りないような気もしてしまった。この手の作風の極めて標準的な作り方すぎてしまって。
ストーリーがなかなか長期間の時間経過を描いているので、どうしても展開は急ぎ足の感覚になる。試合での敗北、馬の売却(未遂)、父の死、試合前の事故、棄権、コーチとの諍い、馬運車の火災・・・などと、次々に悲劇的な出来事が起こる。しかし実際はそれらの間に月日や時間経過があるのだけれど、映画としてまとめると、まるで悲劇のオンパレード。悲劇のダメ押しのように映ってしまい、ラストのオリンピック金メダル獲得までの苦労や苦難を押しつけがましいまでに見させられているような気がしてしまう。その割に、大事な部分(試合シーンもそうだが、初めは乗るだけで馬の世話は人任せだったデュラン選手がジャップルーとが心を通じ合わせていく過程だとか)は非常に撫でるようにさらりとあっさり描くだけにとどまって妙に説明的。印象的なエピソードを数珠つなぎのように繋げてあたかもドラマチックに演出しただけのような気がしてしまい、作品を観ながら、デュラン選手とジャップルーを心から応援したいという気持ちがなかなか芽ばえにくかったなぁと感じた。
そんな中で、特に目を引くのはやはり、馬の美しさと、障害飛越競技の様子だろう。少々気から馬術をやっていたギョーム・カネの馬の乗りこなしも美しいし、映画と馬の相性の良さも改めて感じるところ。ただ競技そのものの魅せ方は決して悪くはないとは思うものの、映画で描かれる大会が複数あるので、何度も試合のシーンを目にすることになるので、次第に見慣れてくるようなところがあり、最初は丁寧に試合を映していたのが、後半はどんどん試合のダイジェスト映像のようになってしまうのをありありと感じてしまって、最後のオリンピックの試合に行き付くまでの盛り上がりに欠いたかな?というのを思ったりもした。