「【“淘汰された奴の存在は無駄ではない!” 漫才の世界に身を置き、様々な葛藤を抱える人々の姿を優しき視点で描き出した作品。】」火花 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【“淘汰された奴の存在は無駄ではない!” 漫才の世界に身を置き、様々な葛藤を抱える人々の姿を優しき視点で描き出した作品。】
■若手芸人の徳永(菅田将暉)は、相方の山下と”スパークス”として、デビューする。が、中々芽が出ない中、熱海の営業先で先輩芸人神谷(桐谷健太)と出会い、その破天荒な芸風に惚れ込み、弟子入りを志願する・・。
2000年の初めからの12年間の二人の関係性を描いた作品。
・板尾創路さんの脚本は、正直に言って、粗い。瑕疵も多数ある。
・尚、吉直樹さんの原作を描き切れたかについては、言及しない。
(私は、映画と原作は別物として考えている、とこのレビューサイトでは頻繁に述べている。私の嫌いなレビューのコメントは”原作の世界観が表現されていない・・”である。だったら、映画を観なければ良いではないか!と思うからである。)
・それでも、この映画を飽くことなく観れたのは、独自の笑いを”意識なく”持つ神谷を演じた桐谷さんの自然な関西弁の演技と、東京弁の徳永の相性の良さが、とても気持ち良く観れたからである。
二人でコンビを組めば良いのに・・、と何度思った事か・・。
・そして、時代の流れについていけない神谷の姿。後輩のシヤタニ(加藤涼)が、あっという間にスターダムへの道を駆け上る中、あと一歩、壁が壊せない”スパークス”の姿。その姿が、多くの芸人さんの姿と被って見えてしまったからである。
(年初だから・・という要素もある。
朝から多数流されるお笑い芸人さんたちの姿。彼らは、圧倒的な勝ち組(嫌いな言葉である)である。)
・スパークスのラストライブでの、徳永の思っている気持ちを”反対語”で叫ぶように口にする姿。”絶対に、漫才士には成りたくなかった・・”
<笑いが生活の一部になっている人が、必ずしも成功する訳ではない、シビアなお笑いの世界。けれど、神谷と徳永の存在は、確かにお笑いの世界の基を支えて居たという事実。
そして、且つて神谷と同居していた(恋人ではない・・)真樹(木村文乃)がラスト、金髪に染めていた髪を黒き色に戻し、幼き子供二人を連れて穏やかな表情で公園内を歩く姿が、妙にココロに沁みてしまった作品である。>