「『再生ではなく改変』」ザ・リング リバース 瀬雨伊府 琴さんの映画レビュー(感想・評価)
『再生ではなく改変』
自宅にて鑑賞。『ザ・リング('02)』、『ザ・リング2('05)』に次ぐハリウッド版シリーズ第三弾で原題"Rings"。原作や邦画版とは懸け離れ、蟬が邪悪な密使としてフューチャーされ、“山村志津子”に相当する“イヴリン・ボーデン”が物語の軸となる。途中、やや間延びした感はあるが、世界観は保たれており、整合性が図れるように工夫されている反面、シリーズものの宿命としてマンネリっぽさも感じてしまった。合格点ではあるが、この出来ではシリーズやこのジャンルのファンでない限り、好意的な評価は得られないのではないだろうか。60/100点。
・ハリウッド版前二作とは、B.モーガン演じる“サマラ・モーガン”の設定と齟齬を来す箇所があり、リブートとも呼ぶべき仕上がりになっている。Jホラーのジメッとした表現を残しつつも、あっけらかんとした恐怖の描写も加味されており、画的にも独自の路線を突き進んでいる。ただスタッフロールの背景や表記は、フォントや背景を含め、前二作を継承した表現となっている。
・冒頭のシーンで飛行機が向かっているのはシアトルであり、これは『ザ・リング('02)』、『ザ・リング2('05)』の舞台となる都市である。亦、この二作に登場したN.ワッツ扮した“レイチェル・ケラー”の名前は、J.ガレッキの“ガブリエル・ブラウン”教授が、“ホルト・アンソニー”のA.ローを相手に電話で話しているシーンに写るPCの画面(デスクトップ)上のアイコンにデータ名"rachel_keller"として、一瞬確認出来る。
・“サマラ・モーガン”を演じたB.モーガンによると、メイクには六時間半を要し、鬘や特殊なコンタクトレンズ等、そのメイク道具は45個に上ったと云う。
・“ホルト・アンソニー”のA.ロー、武骨でありつつ知的な雰囲気もある“ガブリエル・ブラウン(「サマラの謎:死後の神経科学」を読んでみたい)”教授のJ.ガレッキ、キーパーソンとなる“ガレン・バーグ(ファーストネーム"Galen"には、スウェーデン語で「狂人」の意味があるが、墓地ナンバーの294と云う数字には何か意味があるのだろうか?)”のV.ドノフリオ等、女性が表に立つ本作の中で、男性キャスト陣が印象に残る演技を披露していた。
・そもそも本作は'15年11月リリース予定で、'15年3月23日にアトランタでクランクインした。撮影は'15年5月31日に一旦終わったが、約一年後の'16年7月に再撮影が行なわれた。これにより、脚本は書き換えられ、削除したシーンは20分以上にも及び、“イヴリン・ボーデン”役は前作『ザ・リング2('05)』のM.E.ウィンステッドからK.カーターへと変更された。その後も様々な要因で公開が遅れ、一旦お蔵入りも検討されたが、クランクインから約二年遅れで漸く陽の目を見る事となった。
・製作・配給のパラマウントの副社長だったR.ムーアは、本作の興行的な成功を条件に『パラノーマル・アクティビティ』シリーズ('07・'10・'11・'12・'14・'15)の様に年一回のペースで続篇が製作され続ける事になるとコメントしたが、本作製作中だった'16年9月、会社が中国系企業に買収され始めたのを契機に業績不振を問われ、解雇されてしまう。そのポストの後任となったM.コリガンは、続篇の可能性について問われ、「時が答えを出してくれる」と答えていたが、'17年11月に同じく解雇されてしまった。この為、本作の続篇についてのコメントは出なくなり、全くの見通しが立っていない状態が続いている。尚、本作の興行的な伸び悩み(現実には米国内だけで黒字を出している)が、パラマウントに『13日の金曜日』シリーズ('80・'81・'82・'84・'85・'86・'88・'89・'93・'01・'03・'09)のリブート企画に二の足を踏ませてしまったとの風評が流れたが、実際には権利関係の譲渡が複雑に絡んだ為ではないかと思われる。
・鑑賞日:2018年2月23日(金)