「井の中のサマラ SNSを知らず」ザ・リング リバース 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
井の中のサマラ SNSを知らず
Jホラー史上に残る傑作『リング』をハリウッド映画化した
『ザ・リング』。その3作目がなんと12年振りに登場!
初っ端から飛行機内で大量の巻き添え死
というスケールのデカい展開からスタート。
犠牲者がビデオを入手した経緯は語られないし
『未だにVHSビデオ使っとったんかいッ』と
ツッコミたくはなるが、そこからは呪いの映像を
デジタルコピーして呪いを伝染させるという、やっと
オリジナルの『リング』から進歩した展開で物語が進む。
教会地下の監禁空間とか、毛玉から這い出る蝉とか、
クライマックスの『ドント・ブリーズ』とか、
恐怖シーンはそこそこに怖いし、“呪いのビデオ”に
新たに加わった映像の謎を追う内にそれが元凶サマラの
実の父母に繋がっていくミステリ要素が面白い
(なお『ザ・リング2』の時点でサマラの実母は
存命。今回は父親にフォーカスを当てている)。
サマラ誕生は聖職者による忌まわしい行為の結果
という形で、サマラが異質な力を持って生まれた
事にある程度の説得力を持たせた形かしらん。
呪いが遂にSNSで世界中に拡散するラストの絶望感も悪くない。
『マルチメディアを媒介して伝染する呪い』の元祖
とも言える『リング』の名を冠して新作を出す以上は
ソーシャルメディアを物語に絡めない訳にはいかないが、
6年前の大駄作『貞子3D』がぞんざいに処理した事を
本作がようやくきちんと実現してくれた形かね。
...
しかしながら……
6年前の映画ならともかくソーシャルメディアが
すっかり一般的なものとなった2018年においては
これも最早インパクトのあるアイデアとは言えない訳で。
誰もが映像を撮れるようになったデジタル世代
ならではの恐怖譚である『ブレア・ウィッチ・
プロジェクト』『パラノーマル・アクティビティ』、
SNSを媒介する呪いや都市伝説を扱った恐怖譚
『スマイリー』『アンフレンデッド』『貞子VS伽椰子』等
の既製作品を越えるどころか、それらよりずっと薄味。
SNSが利用されるのは殆ど主人公たちの連絡手段
くらいで、ラスト以外はほぼほぼ絡んでこない。
呪いの映像をデジタルコピーする描写は今日日当然として、
薄型TVから出てくる演出なんてかえって古臭く感じて
しまうくらいだし、インパクトはあった航空機内での
パニックも、肝心な所は見せてくれずに消化不良。
(あれだけ沢山モニタあったらどうなるか気になるぅ)
原題は『rings』と複数形になっているので、
呪いの連鎖が幾つも描かれたりSNSで増殖の
速度が増す描写があったりなどのより進歩した
“呪い”が描かれるのではと期待していたのだけど、
サマラの出生の秘密だけで物語がほぼ終始して
しまった印象で残念至極。ミステリ要素自体は
牽引力があるので楽しめたことは楽しめたが……
2010年代的なもう一手が欲しかったかな。
肝心のrebirth(復活)オチも……
実は予告編であの『口から髪の毛』のシーンは
バッチリ出てくるので、サマラの遺骨を火葬
した後でもうひと悶着あるだろうというのが
予測できちゃうんですよね……。勿体無い。
...
まとめると、
そこそこに怖いしミステリ要素も悪くないが、
『リング』を名乗る以上はもっとメディアの進化に
合わせた恐怖が欲しかった。まあまあの3.0判定。
折角の12年ぶりの復活だったけど、やっぱずっと
井戸の中にいたもんだから、スマホとかSNSとか
あんま分からなかったのかしらねサマラちゃん。
<2018.01.27鑑賞>
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余談:
ごめんなさい、ヴィンセント・ドノフリオさん、
全然聖職者に見えなかったです……。だって
登場した瞬間から“アブない人”オーラ全開で……。
(↑やめれ)