「二人の呼吸や表情、飄々としたやり取りを見ているだけで底知れぬ友情を感じる」しあわせな人生の選択 ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
二人の呼吸や表情、飄々としたやり取りを見ているだけで底知れぬ友情を感じる
余命いくばくもない親友と過ごす4日間、と書くとセンチメンタルな印象が拭えなくもなるが、彼らは涙など見せない。何しろ本作に登場するのはオッサンふたり。スペインで俳優として暮らすフリアンは「もうこれ以上の治療はやめた」といい、カナダから遥々やってきたトマスに対し「文句があるなら、とっととカナダへ帰ってくれ」と告げる。つまり本作は序盤から、よくありがちな闘病モノへと進むことを禁じ、むしろ彼らが昔のようにつるみ、新しい愛犬の飼い主を探し、そして突拍子もなく飛行機に乗って渡航したりすることをよしとする。ただそれだけなのだが、阿吽の呼吸で、何の気取りもない言葉を口にし合うふたりの演技が何とも軽妙で心地よい。俳優業を営むフリアンにとってはまさに人生のカーテンコール。そこでどのような幕引きを迎えるか。互いの性格を知り尽くし、固い絆で結ばれた二人だからこその大切な時間、頑なな意志、そしてささやかな余韻が胸を締め付ける。
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