「暴力団もソレ系だとしたら、意外としっくりくる」ダブルミンツ Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
暴力団もソレ系だとしたら、意外としっくりくる
国際的な常識は、LGBT(L=レズビアン/G=ゲイ/B=バイセクシャル/T=トランスジェンダー)といった、性的マイノリティを理解する方向性である。
今年の米アカデミー作品賞は、ゲイの少年期から青年期の差別と愛を描いた「ムーンライト」(2017)であったことを考えると、そろそろ日本でもLGBT作品が評価されても不思議ではない。
直接的なLGBT作品ではないが、妻夫木聡と綾野剛がゲイカップルを演じた、「怒り」(2016)は、日本アカデミー賞にノミネートされていた。また、差別と育児放棄を描いていた「彼らが本気で編むときは、」(2017)で生田斗真はゲイの主人公リンコを演じた。
さて、本作「ダブルミンツ」は、ゲイの"チンピラムービー"というところが新しい。原作は、中村明日美子のコミックで、同じ中村作品のボーイズラブ作品「同級生」(2016)はアニメにもなった。主演は淵上泰史と田中俊介。監督は「下衆の愛」(2016)の内田英治。
ある日、壱河光夫に"女を殺した"と、元・同級生の市川光央から電話がかかってくる。同じ"イチカワミツオ"という姓名の2人は、高校時代、絶対主従関係だった。光夫はSEとして働く会社員になっていたが、光央は反社会的組織に出入りしているチンピラだった。
数年ぶりの再会にも関わらず、光夫は女性の遺体を山中に埋め、光央の共犯者となる。ここから2人の愛とも友情ともつかない関係が進行していく。
イジメっ子とイジメられっ子だった2人を、性的なドミナント(dominant=支配者)とサブミッシブ(submissive=服従者)と見なす。SMプレイの世界だ。そして大人になった2人の関係は殺人事件を境に変化していく。
暴力団事務所って、"オトコだらけの"ソレ系・・・という発想は今までなかった。やがて、光央は組織のコマとして、便利に消費されていく運命。
マイノリティ差別がない世の中では、恋愛ドラマだろうと、ホームドラマだろうと、すべてのストーリー設定は"オトコ同士"ないしは"オンナ同士"に置き換えることが可能。本作はゲイ設定であることを除くと、チンピラものとしては、著しく凡庸だ。
そう考えるとまだまだネタは無限大にあることになる。
(2017/6/9 /ユナイテッドシネマ豊洲/シネスコ)