「人間と人魚をつなぐものは、“赦し”と音楽」夜明け告げるルーのうた robinsnestさんの映画レビュー(感想・評価)
人間と人魚をつなぐものは、“赦し”と音楽
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「四畳半神話大系」「夜は短し恋せよ乙女」などを手掛け、カラフルでポップ、独創的な世界観を作り上げる湯浅政明監督による完全オリジナル長編アニメ。寂れた漁港・日無町を舞台に、東京からやってきた中学生カイと、歌うことが好きな人魚ルー(声も動きもかわいい!)の交流を描いた。やがてカイとクラスメイトの国男&遊歩が組んでいるバンド「セイレーン」の演奏にルーが参加したことで、ルーの存在が町の人々に知られてしまう。3人とルーが絆を育む一方で、古くから災いをもたらす存在とされている人魚を忌み嫌う住人たちもいた。
全編を貫いているのは、“赦し”と音楽。作品の中盤で住人たちに捕えられたルーを助けるため、ルーのパパが炎を発しながら暴走し、町の施設を破壊していくシーンがある。その姿を見た人々は、さらなる恐怖や憎しみを増幅させていく。今も全世界で繰り広げられているであろう、歯がゆく悲しい争いの構図。しかし、カイとルーの間に芽生えた「好き」が、様々な誤解を溶かしていくさまに、心を動かされる。
両親の離婚で心を閉ざしていたカイ、わがままに振る舞いながらも本当は自分に自信がない遊歩、愛する人を人魚に奪われたカイの祖父&タコ婆――ひとりひとりのドラマが丁寧に紡がれ、それぞれの結末が愛おしい。皆が“赦し”を覚えた時、カイが歌う「歌うたいのバラッド」が響き、人々はダンスを踊り出す。
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