ありがとう、トニ・エルドマンのレビュー・感想・評価
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笑いと涙で父娘の距離を縮めるエルドマンという精霊
160分のヒューマンドラマと聞くと多少面食らってしまうところもあるが、本作を観ると、なるほど、あの父と娘が距離を縮めてじっくりと関係性を醸成していくにはそれだけの時間が必要だったのだと思い知らされる。とはいえ、これらのテーマや目的を熟させるのに、本作はなんと奇妙なアプローチを試みたことか。父が扮装するエルドマンは、見た目も言動も変だが、どこか人を惹きつけ、納得させるところがある。しかし、父親は決して聖人君主であるわけでなく、エルドマンに扮しなければ娘に直接本音をぶつけることができない小心者とも言えるのかも。そのいじらしさが何とも言えない共感を呼ぶ。やがてエルドマンというサナギは毛むくじゃらのオバケへと変貌。と同時に、娘の中にも、エルドマンの破壊力、いや人と人との触れ合いを尊ぶ心が受け継がれているのが見て取れる。この父があってこそ、この娘あり。そのささやかだが心に沁みるラストが素晴らしい。
歪んだ社会に舞い降りた風変わりな天使、エルドマン
ルーマニアのブカレストで経営コンサルティング業に勤しむ娘を訪ねて故郷のドイツからやって来た父親は、娘が仕事上で多用するパフォーマンスとかアウトソーシングとかの新興用語の意味が分からない。しかし、そんな父がバレバレの変装と嘘を使ってまで娘に密着するのは、彼女が決して幸せではないことを知っているからだ。かつては社会主義独裁政権によって支配されていたルーマニアが、今やヨーロッパに於けるビジネスの中心地であることが意外だし、町の片隅にたむろする貧しい移民たち(もしくはロマ)との対比は、急激な変化に対応し切れてないヨーロッパの今を映し出しているかのよう。父が演じるトニ・エルドマンは、そんな歪んだ社会と、資本主義の激流に流されていく娘にそっと手を差し伸べる風変わりなエンジェル。その背中には深い哀切といっぱいのユーモアが漂っている。
【”父は娘の人生についてのコンサル&コーチ。そしてGREATEST LOVE IS ALL。”父親は、どんなに娘が優秀でも心配する生き物なんです。父と娘の関係性の変遷をユーモアたっぷりに描いた作品。】
ー 今作は、実に可笑しくてヘンテコリンな作品である。-
■悪ふざけの好きな性格の父・ヴィンフリート(ペーター・ジモニシェック)とバリバリのキャリアウーマンの娘・イネス(ザンドラ・ヒュラー)。
娘と久しぶりに会った父は、コンサルとしてバリバリ働く姿を見て優秀だと思いつつ、彼女が営業用の作り笑いしかしない姿に少し心配になり”トニ・エルドマン”という名前になって、何処から見ても変装しているとしか見えない出っ歯の入歯とかつらを被り、彼女のもとに現れる。
イネスの大事なビジネスの最中に、突如現れ悪ふざけを繰り返すトニ・エルドマンに、イネスはいら立ちを募らせていく。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今作を観ていると、ヴィンフリートがキャリアウーマンの娘・イネスの事を、本当に大切に思っている事が分かるんだよね、娘を持つ男としては。
・けれども、あれだけ大事なビジネスの最中に、変装しているとしか見えない出っ歯の入歯とかつらを被り”トニ・エルドマン”と名乗って、”ドイツ大使です。”。とか言って現れたら、そりゃ最初は苛つくだろうなあ。イネスの女子会に突如現れるシーンは可笑しかったなあ。
・けれども、イネスはそんな父の姿を見て、徐々に父の自分を心配する気持ちに気付いていくんだよね。
・そして、ルーマニアの人達の仕事をマルっとアウトソーシングしようとする会社のコンサルとして働いていたイネスは、”トニ・エルドマン”が仕事の手順を間違えただけで首にされそうになったルーマニアの労働者を助けようとしたりする姿などを見て、”トニ・エルドマン”とルーマニアの家庭のパーティにお邪魔して、ホイットニー・ヒューストンの”GREATEST LOVE IS ALL”を”トニ・エルドマン”のピアノに合わせて歌っちゃうんだよね。
・徐々に”トニ・エルドマン”の影響を受け始めたイネスは、自分の誕生日パーティをイキナリ、全裸パーティにしちゃうシーンもクスクス可笑しいのだなあ。
会社の上司や同僚も、ビックリしながらも恥ずかしそうに裸になって参加するしね。けれども、一番笑ったのは、”トニ・エルドマン”が毛むくじゃらの”クケリ”の着ぐるみを着て部屋に入って来るシーンだったね。イキナリ毛むくじゃらの”クケリ”に肩を叩かれてビックリする(そりゃ、そーだ。)の上司の姿は可笑しかった。
けれども、部屋を出て行った”トニ・エルドマン”を全裸のイネスは一枚だけネグリジェみたいな服を羽織って追い掛けて行って抱き付くんだよね。
<今作は、お互いに相手を思い遣っているのに、上手く意思疎通できなかった父と娘が、父が”トニ・エルドマン”となって、娘に対して”そんなに、しかめっ面で仕事ばかりして、利益優先とか言って労働者たちの仕事を奪ったりしないで、人間らしく生きようよ。”と言う思いを伝える様が、何だかクスクス笑えて、少し心に沁みる作品ではないかな、と思ってしまったのだよ。今作はヒューマニズムを基調にした良き作品だと、私は思いました。>
オフ・ビートな思いやり。 流石、gerwomen♥
ジャーマンキャピタリズムの終焉も間近だが、エネルギーをルーマニアでなんとかすべえ。
娘とその父がルーマニアの下請け会社へやって来る。
父の眼の前でルーマニア人が合理化される
『解雇ってジョークだろ。』
と父が訴える。
トイレを貸してもらったルーマニア人にお礼の言葉として
『ジョークを忘れないで』と父は言う。
それを聞いて娘は
『ユーモアを忘れるなぁって、きつい冗談よ。』
『人員削減とは関係ない。交流が楽しかっただけだよ』
『一人の解雇で騒いでいたら合理化なんて出来ない。』
『その話は止めよう。』
『綺麗事ばかり言わないで
パパだって、結局私達の恩恵を受けているじゃない。』
と帰りのタクシーの中で会話が少し盛り上がる。
弾けた娘はタイトな服を着れなくて、冗談で裸パーティを!
余裕だね。
着れないタイトな服だけど、女性の服ってチャックがなんで背中にあるのかなぁ?勿論、ハイヒールはなんの為に高いのかなァ?
余裕と言うよりも『bullshit movement』だと思うね。それに裸パーティは重なったね。
終盤 娘との会話
『なんの為に生きているって聞かれたけど、困った事に、今はみんな成果ばかり重視する。義務に追われている内に、人生が終わっちまう。時間は止められん。大切な君の為に生活してきたんだ。でも、その時は気付かなかったけどね。』
娘は何も答えず
その時、娘は始めて父の前で笑う。付け歯とロシア帽を被って。
ドイツは日本を抜いてGNPで世界三位になったって知ってる?皆裸パーティやっんだよ。
勿論♥
株価なんて信用しない方がよいよ。
短期逃げ切るなら良いかもしれないでもね。
「ありがとう」か?
100位
2016年にBBCが、世界の批評家177人の選んだ21世紀の映画ベスト100──を発表した。
ふつうだと、このての公的セレクトは、わかりきったタイトルがならんで、おもしろくもなんともないが、この選定は、2000年以降という縛り、且つ、確固たるリテラシーを持ったせかいじゅうの批評家たちの選、なこともあって、ひじょうに興味深いものだった。
知ってのとおりMulholland Drive→花様年華→There Will Be Blood→千と千尋の神隠し→Boyhood・・・とつづいている。
そうだよな、と思うことと、そうなんだ、と思うこと──首肯と発見があり、ものすごく参考になる100選だった。
その選において、トニエルドマンは100位に引っかかっている。
そうだよな、と思ったし、そうなんだ、とも思った。
サンドラヒュラーという女優が出ている。
ヒュラーはHだがuにウムラウトが付いてくる。それでなくてもパッと見て彼女が英米の白人でなくヨーロッパの、とりわけドイツの顔だってことがわかる。とはいえドイツ顔というものがどういう顔なのか知ってるわけじゃないんだが、不思議なもんで、けっこうハッキリわかる。
きれいな人だが、美人と言ってしまうなら、そのモノサシは日本人の持ってるのとは違う。
なんと言うか、アジア人が感ずるところのあっちの人感──モンゴロイドとゲルマンの隔たりを痛感するに足る異質感を持っている。その異質感は好ましい。そして肉感的でない──にもかかわらず、ふしぎな艶っぽさを持っている女優、なのである。
映画は妙。変。
父娘間の葛藤を綴るコメディだが描写はリアルでもあり、コミカルでもある。
また、気まずさもある。そして気まずさは次第に大げさになる。
イネス(サンドラヒュラー)は会社業務と奇態な行動をとる父親との二重ストレスに悩まされている。
終局近く、会社のチームメンバーを招いてホームパーティーをやるのだが、直前にタイトなドレスを脱ぐのに難渋し、そのオブセッションで遂にプッツンと来る。
とっさに裸縛りのパーティーになり、それが、映画内のひとたちと、映画を見ているひとたち──を同時に不協和の渦中へ放り込む。
でも、違和はあるけれど、決して不条理ではない。笑えて泣ける話でもある。
なんで、裸になってしまうの──と思う一方で、その過剰が、快い飛躍を提供している。からだ。
ふつうの映画──という言い方も変だが、ふつうはこんな風に飛躍しない。たんじゅん比較が適切とは思わないが、日本映画だったらなおさらである。
すなわち、男性に性的アピールをする、というもくろみが無ければ、女優は脱がない──わけである。が、この映画は映画的ダイナミズムを提供したのであって、男性客にサービスしたわけじゃない。このクリエイティビティの絶対的格差──がわかるだろうか。
その、裸になってしまうホームパーティーは映画のクライマックスというわけ──ではないのだが、想定外の楽しい飛躍で、みょうになまめかしくもあり、記憶に残っている。
つまり裸にサービスをもくろんでおらず、父娘世代間葛藤をテーマにかかげながら、セクシーな魅力をも提供し得ていた──わけである。映画的ダイナミズムとはそういうもんじゃなかろうか。──なんてね。
BBCの100選に入っていて、そうだよな、と思い、且つそうなんだ、と勉強になった──次第である。
映画で声出して笑うの久しぶり。 痛々しくて身につまされて、こりゃ泣...
レビュー
意味はさっぱり分からないが後味がなぜかよい
オチのないエピソードの積み重ねで映画が進み全体を通してのこれといったエピソードがないので説明が難しい。
後半の全裸パーティはなぜそうなってしまうのか全く意味不明でそれを言えばそもそもトニ・エルドマンなる架空の人物の必然性がさっぱり分からない。映画評などでは「おやじギャグ」と称されているがそれを通り越してキチガイだ。
こんな親は縁を切っておかしくないのだが、イネスはたまにぶち切れこそしても、父親を拒絶しない。このイネスが美人とは言いがたく、あまり笑わないのだが決して非人間的ではなくけっこうドジだったり、また父親に対する家族の情が感じられ、とても好感が持てる。
それに助けられてか、前述どおりキチガイとしか思えない父親も変人だけど根はいい奴と思えてくる。父親もヨーロッパ映画らしく、ブクブクに太っていてシェイプアップに関心さえなさそうなところが真実味がある。
そういう意味では余計なBGMがなく、また意図的なのかハンドカメラで雑に撮っている感じや過剰な演技がないところもヨーロッパ映画らしい。そこに人間味やリアルさがあり、それぞれのエピソードに締まりがないながらも暖かみが感じられる。
そして、イネスのたまに取る突拍子もない行動に、結局のところこの二人は親子だと思え、それがオフビートな笑いを誘う。
2時間半前後の上映時間は途中で気が遠くなるが、観終わったあとに言葉で説明しがたいなりに観て良かったと思える、そんな映画。
俺のアイデアを盗むな!
大きな仕事を任されたイネス(ザンドラ・ヒュラー)。仕事が終わってもレセプション参加、さらには接待と、バリバリ働くスーパーキャリアウーマンといった感じ。大切なプレゼンも控え、忙しい最中に会社にひょいと現れた父親ヴィンフリート(ペーター・ジモニシェック)。しょうがないからと、会社関係のレセプションに連れていくことになった。そんな大切な場所において、「娘の代わりに娘を雇った」だの平気で顧客にまでしゃべりかけてしまう。
「お前、人間か?」などと多忙な娘に対して驚きを隠せない様子のヴィンフリート。異国の地できびきびと立ち振る舞う娘を心配でしょうがない。お酒の場でも出っ歯の付け歯を付けたり外したりと茶目っ気たっぷりだが、相手にしてみれば不気味に映るに違いない。嫌々ながらも父と共に行動し、ようやく帰国してくれたかと思っていたら、妙なカツラを被って“トニ・エルドマン”と名乗り、会社にまた現れる父。ブーブークッション持参でまたしても娘に迷惑をかけるのだ。トニ・エルドマンとして女子会にまで乱入。「リムジンを待たせているから」と早々と退散するが、本当にリムジン借りているとは(驚)
大事な顧客とも一緒に行動して、珍行動にヤキモキする娘であったが、知り合った女性宅まで連れていかれ、卵のカラーリングなどを教わったかと思ったら、突然ホイットニー・ヒューストンの曲を歌わされる。さすが元音楽教師でもある父の伴奏も上手で、顔を真っ赤にしながら歌いきるイネスの姿にちょっと感動。ストレスを発散して、何かが吹っ切れたような一瞬でした。
イネスの誕生日会で、ドレスのファスナーが上がらなかったために突如全裸パーティと化してしまった。同僚たちが次々と現れる中、毛むくじゃらの怪しい着ぐるみ男がやってきた。異様な雰囲気には驚きと笑い溢れるのだが、それが父だと気づいたイネス。全裸パーティと化したところで何かが弾け飛んだかのようだったが、ここで父の愛情を確信する。
162分という長尺だと知らずに観に行ったおかげで、いつ終わるのかと心配になってしまいました。仕事関係のシーンが多すぎるという点以外は概ね満足できましたが、やっぱり2時間弱くらいに収めてほしかった。
青少年は見ちゃだめだからマイナス星1つ
感動しました。
過激な描写があるから星を減らしたけど
私もいい年の娘なので解ります。
自分を見失ってまで…という親との関係。
あぁ素晴らしい父親と娘の愛。
お互い大事には思ってるんですよ。
でも何を話していいかわからないという壁を
取っ払ったら、お父さんは誰より甘えられる人。
見終わって、早く実家に帰ってお父さんに
会いたくなりました。
主人公がホイットニーを歌うシーンも秀逸!
流石の選曲だし、いつも笑って過ごそうとする
そんなお父様に私は100点を送りたい。
最後のシーンで、人生の意味を語るところなんて
じわーっときました。
みんな成果ばかり重視する
義務に追われてるうちに
人生はおわっちまう
時間は止められない
よく思い出すんだよ
自転車の練習をするお前や
バス停でお前を回収して帰ったことを
あとで大切さがわかる
でも、その瞬間は分からない
童話
良い映画なのは分かる。けど長い
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