劇場公開日 2017年6月24日

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「歪んだ社会に舞い降りた風変わりな天使、エルドマン」ありがとう、トニ・エルドマン MPさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0歪んだ社会に舞い降りた風変わりな天使、エルドマン

2017年6月17日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

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ルーマニアのブカレストで経営コンサルティング業に勤しむ娘を訪ねて故郷のドイツからやって来た父親は、娘が仕事上で多用するパフォーマンスとかアウトソーシングとかの新興用語の意味が分からない。しかし、そんな父がバレバレの変装と嘘を使ってまで娘に密着するのは、彼女が決して幸せではないことを知っているからだ。かつては社会主義独裁政権によって支配されていたルーマニアが、今やヨーロッパに於けるビジネスの中心地であることが意外だし、町の片隅にたむろする貧しい移民たち(もしくはロマ)との対比は、急激な変化に対応し切れてないヨーロッパの今を映し出しているかのよう。父が演じるトニ・エルドマンは、そんな歪んだ社会と、資本主義の激流に流されていく娘にそっと手を差し伸べる風変わりなエンジェル。その背中には深い哀切といっぱいのユーモアが漂っている。

清藤秀人