「舞台劇が原作ゆえの閉塞感とわざとらしさを楽しめるかどうか」泥棒役者 AuVisさんの映画レビュー(感想・評価)
舞台劇が原作ゆえの閉塞感とわざとらしさを楽しめるかどうか
西田征史監督が作・演出の舞台劇を自ら映画化したとのことで、物語の9割は絵本作家が住む一軒家の中で展開する。さらにそのほとんどは一階の居間か二階の作業部屋で進行するので、ある種の息苦しさ、閉塞感は否めない。映画的な美しい引きの絵、心を打たれる構図に乏しいのだ。だがこうした演劇的な空間を好ましく思う人もきっといるはずで、好き嫌いが分かれるところだろう。
出自が舞台劇ということでもう一つ、笑いのネタが大ぶりで分かりやすい。言い換えると大仰でわざとらしい。泥棒に入った主人公が別人に間違われてその人物を演じることになるというパターンの反復なので、この演劇的な笑いにうまく乗れたらずっと楽しめるだろうし、普通そんな勘違いしないでしょうと鼻白むと結構つらい。主人公のやむにやまれぬ〈演技〉を含め、俳優たちがそれぞれ無理して張り切っている感じも演出意図だとは思うが、居心地の悪さが残り続けるのも確かだ。
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