「今年のジャニーズ系出演映画でいちばんマトモに楽しめる」泥棒役者 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
今年のジャニーズ系出演映画でいちばんマトモに楽しめる
"関ジャニ∞"の丸山隆平の単独初主演(グループで「エイトレンジャー」がある)。本作は、2006年に西田征史監督自身が作・演出した舞台演劇を映画化したシチュエーションコメディである。
西田監督は、ドラマの脚本業がメインだが、平均視聴率22.8%だった「とと姉ちゃん」(2016年NHK連続テレビ小説)で有名になった。映画の脚本は、小説やマンガなど原作のある脚色のキャリアが多く、昨年も「嫌な女」や「信長協奏曲(ノブナガコンツェルト)」などが映画化されている。人気アニメ「TIGER & BUNNY」(2012/2013)のシリーズ構成も西田の企みである。
一方で監督作は、「小野寺の弟・小野寺の姉」(2013)以来、2本目。やはりオリジナル脚本なので、三谷幸喜のようなオリジナルの書ける監督スタイルである。
主人公・大貫(丸山隆平)は、金庫破りの泥棒だったが、いまは足を洗ってマジメに働きながら、恋人の美沙(高畑充希)と同棲生活を送っていた。しかし、かつての泥棒仲間に過去をバラすと脅され、しぶしぶ泥棒を手伝う羽目に。
ところが忍び込んだ豪邸で、その主人や訪問者らの勘違いに、泥棒であることをゴマかしつつ、いろんな人物になりきることで、その場を切り抜けていくというシチュエーションコメディである。
綿密に設計されたセリフのやり取りでオチが構成されていて、"笑うべきところ"で見事に"笑わされる"。とてもスマートでよくできたコメディだ。とにかく楽しい。
監督の指示は"アドリブNG"だったそうで、セリフ以外の演技力(表情やジェスチャー、タイミング)を試されるわけだが、もともとジャニーズでも"お笑い系グループ"に所属する丸山隆平の自然体の演技は好感が持てる。
ミュージカル界の大ベテラン・市村正親(篠原涼子のダンナ)の意図的で大げさな絡みが、作品全体のテンションを引っ張りあげていて、その流れに、ユースケ・サンタマリアや宮川大輔らが乗っかっていくイメージだ。
美沙役の高畑充希は、ストーリー上は重要ではなく、おそらく「とと姉ちゃん」つなかりでの特別出演に近い。けれど、"かわいい恋人であること"がキモ。光希ファンにはたまらない。
舞台版で主演だった片桐仁も、隣人ユーチューバー役で出演している。また、西田監督の「小野寺の弟・小野寺の姉」で主演した、向井理と片桐はいりが、小野寺進・小野寺より子の姉弟役そのままでカメオ出演しているので見逃さないように。
(2017/11/18 /ユナイテッドシネマ豊洲/シネスコ)