劇場公開日 2017年11月18日

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「想像以上でした」泥棒役者 ふさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0想像以上でした

2017年11月18日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

幸せ

正直、あまり期待せずに鑑賞しました。
薄味の笑いでなんとなく終わる、良くも悪くも残らない、軽く見れるタイプの作品かなあ、と。そんな構えで。

まさか、エンドロールで涙ぐんでしまうなんて思いもよりませんでした。
バットエンドでもなければ、なにか特別に感動させる終わり方でもないです。
作中で少しずつ胸に溜まった、やさしくてあたたかくてじんわりと幸せな気持ちが自然と涙になるような、不思議な感覚でした。

基本的には終始コミカルな調子で進んでいきます。
登場人物が個性的でみんな少しずつクセがあり、ユーモラスで思わずクスリと笑ってしまう場面がてんこ盛りなのですが、下品な(人を下げて笑いを誘ったり、変な弄りで貶めるような)笑いは皆無なのでとても気持ちが良かったです。

泥棒に入るというストーリー上「バレるか!?」と緊迫する場面は何度も訪れるのですが、前後のコミカルさとキャラクターの柔らかさに加え、毎回わりとすぐに疑いが逸れるため、嘘がバレそうな嫌なドキドキが苦手な人も(一概には言えませんが…)比較的安心して観られるのではないかなと。
テンポがいい分、逆に「今回こそバレるか!?」というワクワク感が何度も味わえて飽きも来ませんでした。

また、序盤は完全にコメディですが、最後まで面白おかしいだけ、なわけではありません。
ひょんなことで屋敷に集まった元泥棒、絵本作家、編集者にセールスマン…全員心優しく思いやりがあり、程よくおバカでいい人たちなのですが、実はそれぞれ大きな後悔を持っています。
主人公が泥棒という正体を偽るために嘘に嘘を重ねる中で、本音で交わした言葉が、関わりの中で触れあった優しさが、各々の躓いた記憶に向き合う力になっていきます。
ただしやっぱりこの監督、笑いを挟まないと死んでしまうのかな?シリアスな中にも逐一クスリとしてしまう場面があって、暗く重くなりすぎません。
そんな仕掛けも、ストレスフリーで心に優しい温かさだけがじんわりと満ちる後味に繋がっているのだろうなと。上手いと思いました。

アクションやサスペンス、大どんでん返しや後味の悪い作品が好き!という方や、小さな優しさやぬくもりに価値を見出さない方には少しつまらないかもしれませんが、個人的には大当たりです。
優しい気持ちになりたい方、ぬくもりのある人間関係が好きな方、クスリと笑えて何故かじーんとするようなお話が好きな方には、是非ともおすすめしたい作品でした。

ふ