「文学と音楽が思ったほど絡まない」愛を綴る女 よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
文学と音楽が思ったほど絡まない
映画の中で「ラ・シオタの出身云々」の台詞。聞き覚えのある地名だと思ったら、リュミエール兄弟が初めて上映した「列車の到着」のラ・シオタではないか。
チャイコフスキーの「舟歌」がカーラジオから流れる時に、エミール・ギレリスという演奏家の実名が出てくる。クラシック音楽を使用する際に演奏家の名前をはっきりさせることは珍しい。
原題は「結石」という、何とも色気もへったくれもないもの。この邦題には配給元の苦労が滲む。
主人公の文学・音楽への情熱が、物語の展開にしっかりと絡めば素晴らしかっただろう。
残念なことに、療養所を出てからの彼女の手紙はストーカーの怨み言の域を出ていない。もっと幽霊の心の琴線に触れるものでなければ、彼との再会を観客が想像するには至らない。
女盛りから、少し老いの入った中年まで、マリオン・コティヤールの存在感がかろうじて映画を文芸「的」なものにしている。
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