「この映画自体が作られたショーなのである」グレイテスト・ショーマン ダコタさんの映画レビュー(感想・評価)
この映画自体が作られたショーなのである
素晴らしい音楽と王道ストーリーがマッチした爽快感のある作品。
主人公は貧困や避難、妬みなどを乗り越えて一流のショーマンになっていく。
成功や名声を追い求めるあまり時には一番最初に願った夢を忘れてしまい痛い目を見ることもあるが、
これまで作ってきたショーが、仲間が、家族の存在が、彼を本来の道へ引き戻し支えてくれる。
この時代特有の差別や階級意識などについてはあまり掘り下げられていないが、それを見せるための映画ではない。
この映画自体が、作中の主人公が目指した、人を楽しくさせるための「ショー」なのだ。
だから歴史を踏襲してシリアスな映画を見たい人や、社会問題にスポットを当てて観たい人には向いていない。
作中では主人公が目指すショーのありかたが描かれている。
幼少期、幼いヒロインを笑わせたときのように、主人公はただ純粋に「人を楽しませたい」「あっと驚くような娯楽を提供したい」ということを目指している。
そして彼の元に集まったフリークスや黒人などのスター達は、自らのマイノリティやコンプレックスが、ショーの中では人を笑顔にさせ、夢中にさせるものであると気づき、人を楽しませることに悦びを見出していく。
見終わった後に、おそらくほとんどの人は、この映画そのものが彼の画策したショーなのだったと気づくだろう。
いつの間にか、我々は彼の観客にさせられていたのだ。
一本取られた、と。
なので、純粋に楽しいものを楽しめばいいと思う。
我々映画鑑賞者が「楽しんで笑顔になれる」ことがこの映画が目指したものなのだ。