劇場公開日 2018年3月30日

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「ジェニファー史上最高傑作にして、娯楽アクションではないリアルスパイ映画」レッド・スパロー Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ジェニファー史上最高傑作にして、娯楽アクションではないリアルスパイ映画

2018年4月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

知的

間違いなくジェニファー・ローレンス史上最高傑作である。ジェニファーはこういう役がやっぱりいい。

ジェニファーはあらゆるタイプの役柄をこなすが、共通している魅力はカノジョの中にある"孤独感"を見せる役柄のときだ。ファンならうなずけるはずだ。代表作の「ハンガーゲーム」(2012~2015)のカットニスや「新X-MENシリーズ」(2011/14/16)のミスティークなど、家族や恋人などに思いをはせながらも、運命に翻弄され孤独で闘うときに見せる、"あの顔"にクラクラする。

本作のドミニカ・エゴロワもそんな孤独の戦う女タイプであり、母を守り、ライバルであるCIAエージェントと恋に落ちる。ハニートラップを得意とするスパローにとって、この恋がどこまで本物かは分からないところも、孤独を浮彫りにさせる。

さらに本作は、30年以上もCIA勤務をした原作者による、リアルスパイ小説という素材から成り立っているところも強烈だ。

「007」や「ミッション・インポッシブル」、「ボーン・アイデンティティー」などのシリーズにもない、新しいタイプのスパイ映画である。前述の作品は娯楽アクション要素が大きく、映像的な刺激を求めてエスカレートしすぎたために、スパイ本来の"騙し"、"欺き"が置いてきぼりされてしまったかもしれない。

女性スパイを主人公にしたものも、シャーリーズ・セロンの「アトミック・ブロンド」(2017)や、アンジェリーナ・ジョリーの「ソルト」(2010)など、たいていアクションである。

しかし本作のように、これでもかと連続する騙し合いのテクニックと人心コントロールを見せつけられたものは思いつかない。誰が騙して騙されているのか、最後まで見えないばかりか、敵・味方関係なく、全員をあざむく。

たっぱ(身長)がデカくて脚も長く、グラマラスなジェニファー・ローレンスでないと務まらない役だ。美しい肢体をさらけ出し、派手なワイヤーアクションなんか演らずとも、実に"華"がある。

痛々しいヴァイオレンスシーンや性的シーンもあり、ジェニファー・ローレンスの体当たり演技に一瞬、目を奪われるが、それらが薄まってしまうほど、駆け引きに見せられる。

最後に不謹慎な話だが、スパイ映画が輝いていたのは、冷戦時代だ。米・露の仲が冷めてきた昨今、本作のリアリティには追い風が吹いている。世界情勢には不安が募るものの、スパイ映画的には結果ウェルカムだったりする。

(2018/3/30/ユナイテッドシネマ豊洲/シネスコ/字幕:岸田恵子)

Naguy