「リメイク続編に期待」オリエント急行殺人事件 アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)
リメイク続編に期待
字幕版を鑑賞。オリエント急行殺人事件はアガサ・クリスティの代表作の一つで,1974 年にも映画化されており,43 年ぶりのリメイクということになる。74 年版の出演者には,アンソニー・パーキンス,ショーン・コネリー,イングリッド・バーグマン,ジャクリーン・ビセットなど錚々たる豪華俳優が出演した名作であったので,果たしてリメイクが興行的に上手く行くのだろうかと興味深く鑑賞した。
列車内の事件そのものは,驚くほど原作に忠実で,旧作との違いもほとんどなかった。ただ,列車に乗り込む前にポアロがエルサレムで事件を一つ解決する様子が冒頭部分に追加されていた。007 のオープニングのような感じでポアロの能力を示す意図なのだと思ったが,この部分が予想外に長かった。演出のキレは悪くなかったので,先が楽しみになったが,容疑者を一人一人尋問するところでかなりダレて眠気を誘ってしまったのが残念だった。
ジョニー・デップが出ているというのが話題だったが,彼でなければならない役ではなかった。ペネロペ・クルスが出ているというのにも興味を惹かれたが,妖艶さが全く感じられない役どころだったのには驚いたし,かなり失望を禁じ得なかった。てっきり伯爵夫人を演じるものと思っていたからである。旧作で伯爵夫人を演じたジャクリーン・ビセットの美しさは筆舌に尽くし難かったので,今作にも期待したのだが,あまり目立っていなかったのが非常に残念だった。一方,監督自らが演じたポアロはなかなか良かったと思うが,MVP は,ハバード夫人を演じたミシェル・ファイファーではなかろうかと思う。エンディングで歌まで披露しているらしい。
音楽は雰囲気を壊さず,トラディショナルで良い曲が書かれていた。アガサ・クリスティ作品の映画化は,1970 〜 80 年代に盛んに制作され,それぞれが非常に印象に残る作品だっただけに,リメイクという話がなかなか出ず,新作に飢えていたところだったので,個人的には非常に楽しめた。この調子で続編にも期待したいところである。台詞の中で,次は「ナイル殺人事件」かと思わせるようなやり取りがあったので期待したいが,個人的に最もリメイクが見たいのは「検察側の証人」である。
大勢の豪華キャストの中で,誰が犯人なのかという興味を引くべく,40 年くらい昔のクリスティ作品の映画のポスターは,出演者の顔がずらりと並んだものが多かったが,市内に貼られたそのようなポスターの中に,赤いマジックで顔を囲み,「こいつ」とネタバレされたものを見たことがある。映画を観た後だったのでことなきを得たが,ひどいことをする奴がいたものだと思った。本作でそれをやるととんでもない事態に陥るのだが。:-D
(映像5+脚本3+役者3+音楽4+演出3)= 72 点。