「すっかりアメリカナイズされてしまったキングスマン」キングスマン ゴールデン・サークル 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
すっかりアメリカナイズされてしまったキングスマン
前作は、若者を【キングスマン】にスカウトし鍛錬するという、今思えば確かに序章のような物語だった。そして主人公エグジーが列記としたキングスマンになったその後の物語がこの映画ということになるのだが、エグジーが立派に育ってしまった以上、ストーリーとしてはもはや至って普通のスパイ・アクションと変わらない。更に、このシリーズの最大の特徴であるはずの「英国紳士」という要素がすっかり抜け落ちてしまっているのがそれを決定づける。
アメリカの【ステイツマン】という組織が出てくるのはいい。洗練されたスーツ姿の英国人と無骨なカウボーイ姿の米国人が対峙する構図はなかなか面白そうだと思った。けれど、もうこの映画、舞台を完全にアメリカに移してしまって、見える景色はアメリカ南部の風景だし、流れる音楽はカントリー・ミュージックだし、肝心のアクションも前作で冴えわたっていた英国紳士ならではのアイテム使いや洗練された紳士の所作などが堪能出来ないのである。せっかく「英国紳士とカウボーイ」という対比を作っているのにそれもあまり活かされていないし、もう至って普通のスパイ・アクション。いやアクション映画としては良く出来ているし、アクションシーンの外連味とスピード感、そして残虐さをスタイリッシュさで相殺しつつ派手な演出を施す感じも十分優れていると思うのだけれど、なんだか全体的にアメリカナイズされてしまって、キングスマンとしての持ち味を失ったような気がしてしまった。嬉々としてエルトン・ジョンを引っ張り出してオチみたいに使ってしまう感じもなんかアメリカっぽい着想だし、あんまり質のいいジョークとも思わない。その上、チャニング・テイタムにハル・ベリーにエミリー・ワトソンに・・・とずいぶん豪華なキャスティングが実現しているのに、彼らの持つ力量を持て余すように物語の中でキャラクターが持て余されてしまっているのもなんだかもったいない限り。
演者でいうとジュリアン・ムーアが良かったな。彼女自身もどこか肩の力が抜けているような感じで、楽しそうに悪役を演じつつも、やっぱり実力派だけあってツボを押さえた巧みさで猟奇性と色気を同時に醸し出していて実に素敵。年齢のことは意識したくないけど、彼女の年齢であんなにナチュラルに色っぽくて綺麗ってのも素晴らしいことですよね。
第一作ほどの興奮はなかったものの、2時間を楽しむだけの要素はふんだんに盛り込まれていて娯楽としては十分。いろいろ不満は書いたけれど、単純に楽しいという気持ちで映画を見られるというのも素晴らしいこと。もし第三作目があるとしたらきっと見に行くだろうし、そうなったら今度はマーリンが生き返ってきそうな予感がしまくるけどどうでしょう?
それにしても【キングスマン】にしろ【ステイツマン】にしろ、組織としての資金が実に潤沢。出どころはどこだろう?・・・なんて、つまらない金勘定をしてしまった自分が恥ずかしい。