「希望と絶望。」三度目の殺人 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
希望と絶望。
最後まで明かされない真実を前に、自分なりの想像推理を
働かせてしまう観客を期待したんじゃないだろうかと思う
是枝監督の計算ずくし。もちろん自分もそれなりの三隅像
を冒頭から描き続けて終盤の重盛の推理と関連付けている。
彼が本当のサイコパスで空っぽの器なのだとしたら、真実
など到底分からない。が、法廷ではそんなことはどうでも
いい、予定通り裁判が進めばよし。といわれているようで
後味の悪さが際立つ。監督のリサーチ曰く、ドラマや映画
で描かれるような間際の新証言!なんてのは皆無だそうだ。
しかし今作は映画なので、三隅や重盛の特徴をまるで相似
させるように描いている。彼らがなぜ接見室であんなにも
互いを結びつけたのか(これも三隅の作戦かもしれないが)
父親のことを調べ上げた三隅が用意周到に重盛を用意した
なんてことも考えられる。考えれば考えるほどキリがない。
個人的に十字を使う意味は制裁でなく弔う意識の方が強い。
冒頭で重盛は娘にペットのお墓はちゃんと作ったかと聞く。
三隅は大事に飼っていたカナリア5匹を庭下に埋めている。
私も子供の頃からペットが亡くなるとお墓を作り十字の枝
か花を添えた。制裁じゃなく天国で安らかに眠れるように。
後半三隅は房の窓に来たカナリアに対して手招きしている。
どんな人間でもたった一人の時に見せる表情や仕草に嘘は
ないと私は信じているので、あぁこれで彼の本性が見えた
と(軽々しくも)考えた。救いのない話にみえるが、実際は
かなりホームドラマに近い親子性を感じさせる物語だった。
これが海外で公開されても「?」と思う箇所が多いと思うし、
実際に日本人だってこんな司法制度をどう思うかと疑問を
呈したくなる。新米弁護士の川島が呆然としたのも分かる。
(父親の行為を母親が救ってくれない娘の絶望が痛かった)