「あざとい」三度目の殺人 かぴ腹さんの映画レビュー(感想・評価)
あざとい
福山雅治の顔は同性から見ても端正で美しい。結婚して熱狂的ファンが離れたと聞くが、スクリーンいっぱいに何度もアップで映る彼の顔は、「劣化」という言葉と無縁のようだ。
広瀬すずは「海街diary」ではじけるようなかわいらしさを見せたが、彼女を左から撮ると違う印象をつけることことができるということがわかった。
この2つ以外、得ることがなかった映画だ。
「司法は真実を追求しているか」と投げかけるが、この映画は映画として表現したいことに忠実だろうか?
ヨーロッパ映画によくあるBGM。
死刑廃止論。
実子の性的虐待。
コンペティション受賞狙いの白人ウケしそうなことばかりちりばめられている。
広瀬すずが出てきたときに福山雅治にニュートラルな態度だったので、まさか「父親の虐待」じゃないだろうな。と思ったらそのとおりだったのでガッカリした。それだけ広瀬すずの演技が優れていたということでもあるが。
広瀬すずは「怒り」でもレイプされる役だった。なんで彼女に性的匂いをそんなにつけたがるのか?土屋太鳳と対比して批評されていたが、「アイドルっぽい役だけじゃなく、将来につながるように役者の幅を広げなければ……」などと吹き込んでいないだろうか。「いずれ自分の作品で脱いでもらう、それを観客ものぞんでいる」という「映画業界の忖度」を作っていないだろうか。勘違いも甚だしい。満島ひかりの裸しかり、そんなもの誰も望んでいない。
この監督は家族のテーマから離れられないようだ。今回は親に翻弄される子。役所広司と娘、被害者と広瀬すず、斉藤由貴と広瀬すず、福山雅治と娘、橋爪治と福山雅治。詳しくは語られていないがもしかしたら役所広司とその親。ちりばめたはいいが、収拾がつかなくなっている。
誰かをかばうために嘘をついて罪をかぶるなんて、福山雅治がいるだけに「ガリレオ」か?めまいがした。東野圭吾の原作なのか。
この監督はこの映画で使い古されたテーマを羅列するだけで、新しいものをなにも示していない。表現したいことがあって作った映画ではないだろう。
「司法の内輪の事情」に批判めいたことを言っているが、この映画は「受賞狙い」、「スキャンダラスなテーマ」、「大衆ウケ狙い」で塗り固めた、多分に「映画業界の事情」で作られている。偽善の塊だ。