「濃密で、やり切れない。」三度目の殺人 エクさんの映画レビュー(感想・評価)
濃密で、やり切れない。
懐かしの母校の先輩にあたる是枝裕和の新作。サスペンスと聞いて、今までの作風からかけ離れてしまうんだろうかというお門違いな心配をしながら行ってきました。
面白かった。是枝作品特有の濃密な登場人物同士のやりとりは変わらず。
人間のやり切れなさを、そしてこの社会の問題もうっすらと提示して、サスペンスにも是枝裕和エッセンスが通底していました。
役所広司の演じた人物の生きにくさって一体なんだろう、と終わった後に考えていました。「どうせ俺なんか…」という一番やっかいな気持を持ってしまったこと、長い収監生活がそうさせたのか元々彼が持っていたものなのか、何しろこれが大きくなりすぎてしまっていることが彼のすれ違いや誤解を生んでしまう大きな要素の一つのように見受けました。
決めつけすぎた見方かも知れませんが、そこから始まるすれ違いやそこを掬えない社会を描いている作品のように見受けました。
そうそう、是枝×広瀬すずと聞いて、勝手に大きくなっていた期待は残念ながら裏切られました。
彼女の魅力の一つの『成長期の女性の身体性』があまり発揮されていなかった気がします。
この作品とはまったく相容れませんが、やっぱりそこを期待してしまうんですよね、是枝監督だし。
そこだけ残念でした。
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